来年4月利用の高校教科書から「集団自決/自決強制」が削除された問題で、沖縄県議会が2度目の意見書を可決した。
自民党から共産党まで、全会一体となっての取り組みである。
自民党の仲里県議会議長は、これを戦争美化の動きの一環であると批判する。
ことは狭く沖縄だけの問題ではない。
沖縄県議会、2度目の意見書可決 「自決強制」削除(朝日新聞、7月11日)
沖縄戦の際、日本軍が住民に集団自決を強制したとの記述が教科書検定で削除された問題で、沖縄県議会(定数48、欠員1)は11日、検定意見の撤回と記述の速やかな回復を求める意見書を可決した。6月22日に同趣旨の意見書を可決したが、文部科学省が撤回に応じる姿勢を示さなかったため。県議会事務局によると、同じ定例会で2度、同趣旨の意見書を可決するのは初めてという。
沖縄側はこの問題で、県議会や41の市町村議会すべてで同様の意見書が可決されたのを受け、安里カツ子副知事や仲里利信・県議会議長、首長会や議長会の代表計6人が4日に文部科学省を訪ね、要請をした。これに対し、文科省側は「(検定意見を決めた)検定調査審議会の決定に口を挟むことができない」との姿勢を崩さなかった。このため、県議会が再び意見書を出すことになった。
意見書は文科省が審議会の決定を理由に撤回を拒否していることについて、実際には同省が検定意見の内容をとりまとめて審議会に諮問していることなどを指摘し、「同省の回答は到底容認できるものではない」と批判している。
また、文科省で大臣に面会を求めたにもかかわらず、官房審議官が対応したことを念頭に、「県民の総意が明らかにされたことに対する重みへの配慮が十分でなかったことはまことに遺憾」としている。
採決では議員1人が退席し、残る議員の全会一致で可決した。意見書は首相や文科相らに送る。
意見書の可決を受け、仲井真弘多知事は「県民の総意だと極めて重く受け止めている。集団自決において、手榴(しゅりゅう)弾が配られるなど広い意味での日本軍の関与があったと思っており、その記述が削除・修正されたことは誠に遺憾。今後とも県議会をはじめ(首長会など沖縄の)地方6団体で歩調を合わせて対応していく」とのコメントを出した。
沖縄県議会「集団自決」再可決へ 仲里議長インタビュー 「軍命現地調査で確信」(西日本新聞、7月11日)
来年度から使われる高校教科書の検定で、沖縄戦の集団自決を「日本軍が強制した」との記述に文部科学省が検定意見を付けて削除させたことに対し、沖縄県議会は11日、検定意見の撤回と記述回復を求める意見書を再可決する。6月にも同趣旨の意見書を可決しており、再可決は極めて異例。仲里利信議長(70)(自民)にその意義などを聞いた。
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−再可決の理由は。
「6月の可決後の今月4日、市町村や議会など地元六団体の代表が上京して、文科省に記述回復を求めたが、『回復は困難』という従来の説明を繰り返した。ここであきらめたら、県民が勝手に死んだという、ねじ曲がった歴史が教科書に残ってしまう」
−「軍が強制した」という記述を削除させた文科省の説明は納得できないと。
「その通りだ。文科省は『検定結果は検定審議会の専門的な判断に基づくもので、口を挟めない』というが、本当にそうか。検定結果は、文科省の調査官が記述修正を求める原案を作ったことは報道で明らかになっている。最初に結論ありきの仕組まれた検定だと思う。審議の中身は非公開という、見えない検定制度が問題の根幹だ」
「今月6日に、県議会の文教厚生委員が、多くの住民が犠牲になった慶良間諸島の体験者から、当時の様子を聞き取り調査した。『米軍が上陸したら死になさい』という軍命を役場幹部だった兄が受けたという女性の話や、自決用の手りゅう弾が配られたという証言も聞いた。軍の存在や軍命なしに集団自決は起こらなかったという、確信を得た」
−戦後62年の今、記述を書き換える狙いをどうみるか。
「沖縄戦で県民は旧軍に苦しめられた。その軍のイメージを変えよう、戦争を美化しようという一連の流れの一環ではないか。そう思えて仕方ない。私は自民党員だが、この件に党派は関係ない。最近はどこに行っても『議長、しっかり』と励まされる。共産党の方からも…。30年の政治生活で初めてのことだ」
−記述回復に向けた今後の展望は。
「沖縄戦当時、三歳の妹といとこが避難先のガマで泣きやまなかった。日本兵が来て『敵に見つかれば皆殺しだ。これを食べさせろ』と、毒入りのおにぎりを突き出したが、家族で話し合ってそこを出た。戦争の悲惨さを後世に伝えるのは生き残った者の責務。県内や本土の多くの団体が立ち上がり、文科省に史実回復を求めてほしい」
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