水上勉・不破哲三『同じ世代を生きて--往復書簡』(新日本出版社、2007年)を読み終える。
心臓病が機縁ではじまった、お二人の「親友」ならぬ「心友」としての15年に渡る交流の記録である。
それぞれの道に、日々莫大なエネルギーを注ぎながら、それでも互いを思いやり続ける両氏のやさしさとスケールの大きさに、清々しくも圧倒される。
ここに示された交流の積み重ねをあたまにおいて、あらためて『一滴の力水』を読み返してみたいと思わされる。
他方、こちらは、いささか心に痛みを感じてのことになるが、父・水上勉を語る窪島氏が、父には、自分が勝ち得なかった「家庭」のぬくみに対する羨望があったのではないかと述べるところも印象的。
精進料理をふるまった後の七加子氏の言葉を4年も覚え、ふた袋の手製のゆであずきを土産に不破氏宅を訪れるなどのあたりには、確かにそんな気配が感じられる。
京都市長選での井上候補に対する2度の推薦文、追悼の言葉を述べずに昭和天皇死去を語った新聞の文章など、文士・水上勉の決然たる姿勢も見事である。
いずれにせよ、ご両人とも人間がでかい。その道の達人同士の交流である。
床の間くん、石版時代の原始ワープロ、かなり飲んでいた寝酒のウォッカといった、不破氏個人についての副産物的な情報にも目がとまる。
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