兵庫県も誘致に血道をあげたシャープの新工場建設だが、誘致合戦に勝利した大阪府・堺市に起こっているのは、下のような現実である。
地方自治を「地域経営」に変質させ、それらの対企業貢献度を競わせることで、日本中を一層の大企業天国につくりかえていくこと。
それが日本経団連が語る「道州制」の基本の内容。
何も自治体自身がそれを先取りする必要はないではないか。
税金注いでシャープ新工場 “財政潤う”に疑問符 堺市(しんぶん赤旗、2月25日)
大阪府堺市の臨海部の甲子園球場三十二個分(百二十七ヘクタール)の敷地にクレーンが林立しています。建設しているのは二〇〇九年度操業予定のシャープ株式会社の液晶パネルの新工場です。大阪府は「五年越しの恋が実った」と、関連企業を含めて三百三十億円の税金を投入。堺市は経済波及効果を宣伝し、百億円の税金をつぎこみます。しかしこの世界最大規模の工場の建設をめぐって問題が噴出しています。
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堺市は「十年間でシャープから百九十億円の税収が得られる」といいます。これは、市財政が豊かになるという誤解を市民に与えるものです。
日本共産党の石谷泰子議員が昨年十二月議会でこの問題を質問しました。
実はマイナス
市は「シャープからの税収は大半が固定資産税」と説明しています。ところが、堺市は一〇年から十年間、シャープが払わなければならない固定資産税を八割もおまけしています(十年間で約三百億円)。
石谷議員は、国から地方に入る交付税の制度では、市がおまけした固定資産税分も税収があったと計算され、その分の交付税が減額されるしくみであることを指摘し、差し引き大きなマイナスになることを明らかにしました。
シャープの新工場のために、堺市は支援室まで設置。職員二十四人の人件費は年二億円になります。
市はシャープへの支援の理由に経済波及効果をあげます。工場完成後の生産活動で年約一兆一千億円の効果があるとして約一万人、うち市内六千人と試算しています。しかし〇四年一月に操業を始めた同社の三重県亀山工場では、約二千六百人の労働者のうち亀山市の新規雇用は三十数人です。市外からの派遣や請負などの非正規労働者がほとんどです。堺市は「市内雇用に配慮する」としますが、具体性はありません。地元中小企業への好影響も、シャープは敷地内に下請けまで連れてくるので期待できません。
石谷議員は質問で、シャープの進出を市民のくらしの向上に役立つものとするために、市のゆきすぎたシャープ支援を節度あるものにすること、シャープにも大企業として社会的責任を果たすよう求めました。
問題業者使う
工事をめぐってもさまざまな問題があります。
シャープの工場建設を請け負っているのは清水建設です。堺市は、談合など三つの事件で同社を指名停止にしています。それにもかかわらず、市は、シャープ工場に隣接している堺浜中小企業向け用地の造成などの工事(約八億六千万円)を同社と随意契約で結びました。シャープの工事と一体ですすめられるというのが、市の言い分です。
もともと二百五十万円以上の工事は原則競争入札になっています。それを、指名停止中の業者と随意契約することは、企業犯罪を免罪するものです。識者も「背後で何かあるのかと疑われても仕方がない」(一月三十一日「読売」)と批判しています。市とともに、議会で随意契約を了承した自民、公明、民主各党の責任も問われます。
清水建設は、シャープ工場の工事でも、暴力団と関係のある会社を下請けに参入させていました。
日本共産党堺市議団の栗駒栄一市議団長は、「堺市は財政難を理由に住民福祉を切り下げる一方で、大企業には経済効果を理由に過大な応援をしています。この逆立ち政治をただし、正社員雇用の拡大を求めていきます」と語っています。
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