以下は,この夏に神戸で行なう講座の案内文です。
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〔夏期集中・入門講座〕
映像で学ぶ侵略の歴史と加害の実態
知っていますか? 「慰安婦」問題,強制連行,加害の記憶
神戸女学院大学・石川康宏
http://walumono.typepad.jp/
こんにちは。神戸女学院大学の石川です。今年の夏は「慰安婦」問題を柱に,日本の侵略の歴史や加害の実態について学びたいと思います。4回だけの集中講座です。時間の半分くらいは映像を見ることに使います。私は歴史研究の専門家ではありません。この講座をつうじて,私もみなさんといっしょに学んでいきたいと思います。「戦争のことは知らない」という若いみなさん大歓迎です。特別な歴史の知識がなくても,誰でも学べる入門講座にしていきます。ぜひご参加ください。
○第1回(7月18日)「日本兵たちの性の奴隷にされて」
日本の侵略戦争が終わったのは,いまから61年前の夏のことです。「遠い昔」といってもいいかも知れません。しかし,戦争の被害者はいまもアジアにくらしています。第1回は,日本軍が植民地朝鮮の若い女性を中心に,大量の性奴隷をつくりあげた「慰安婦」制度の過去と現在を学びます。これに政府や軍がかかわったことは,日本政府も認めています。ですが,誠意ある謝罪や賠償は今もまったく行なわれていません。
映像『沈黙の歴史をやぶって--女性国際戦犯法廷の記録』(64分)を見ます。2000年に東京で行なわれた民衆法廷の記録です。アジア各地から日本に,性奴隷を強制された被害者が集まりました。「慰安婦」をレイプした元日本兵の証言や,「慰安所」の運営や設置など軍の指揮系統にかかわる日本の歴史研究者の証言もあります。判決は「人道に対する罪」での「ヒロヒト(昭和天皇)有罪」をいいわたしました。
○第2回(7月25日)「戦場で人を殺せる鬼になる」
1894年の日清戦争で日本は台湾を植民地にし,1904年の日露戦争をきっかけに朝鮮半島や中国大陸への侵略の足がかりをつくります。以後,朝鮮の植民地化(1910年),ロシア領土の獲得をねらったシベリア出兵(1918年),中国内部での「満州国」のでっちあげ(1932年),中国への全面侵略(1937年),東南アジア・太平洋地域への侵略の拡大(1941年)と,敗戦までの歴史は侵略と植民地支配に埋めつくされます。その侵略の歴史を大きくまとめてふりかえってみます。
映像『証言・侵略戦争-人間から鬼へ,そして人間へ』(43分)を見ます。戦争での日本人の犠牲者は310万人,アジアの犠牲者は2000万人から3000万人です。日本人兵士はアジアのたくさんの人を殺しました。国内では普通の若者,夫,父だった人間が,どうして平気で人を殺せるように変わるのか。その実態を元日本兵が証言します。
○第3回(8月1日)「戦争への反対をゆるさない天皇制の政治」
外にむかっての侵略の時代は,国内でも自由や民主主義がつぶされていく時代です。かつて独立国だった沖縄が日本に「同化」され,北海道のアイヌも「同化」されます。「内国植民地」といわれる日本列島全域への軍事支配の徹底です。この時代の主権者は天皇ただ1人だけでした。天皇の政治への批判は誰にも許されず,侵略戦争に反対といえば逮捕・拷問・死刑の道が待っていました。戦争の中での天皇の役割にも注目します。
映像『私たちは忘れない-追悼・姜徳景ハルモニ』(16分),『証言・中国人強制連行』(41分)を見ます。かつて「慰安婦」とされた姜徳景さんは「責任者を処罰せよ」という絵をのこしました。描かれたのはヒロヒトでした。政府は,たくさんの労働奴隷もつくります。中国で拉致された農民が,日本の軍需工場で,鉱山で,建設現場で働かされます。「強制連行」を決めた軍需大臣は,戦後日本の首相となった岸信介でした。
○第4回(8月8日)「大切なのは加害の歴史に向き合う勇気」
ヒトラーのドイツと,ヒロヒトの日本は,お互いに大変な加害の罪を犯しました。しかし,加害の歴史に向き合う姿勢は,戦後まるで違ったものになっています。日本の賠償を話し合うサンフランシスコ講和会議(1951年)には,中国も南北朝鮮も呼ばれていません。日韓基本条約(1965)の時にも,日本は謝罪をしていません。「昔のことだ」「水に流そう」という,無責任な開き直りの歴史です。その一方,ドイツには,同じ歴史が繰り返されない保障をつくる努力があります。謝罪と賠償をめぐる戦後の歴史を学びます。
映像『アウシュビッツからベルリンへ-加害の記憶をたどる旅』(27分),『アルバムでたどる その時代と生涯』(11分),「2005年9月14日の水曜集会」(10分)を見ます。「アルバムでたどる」は「女性国際戦犯法廷」開催の中心に立った松井やよりの生涯です。「水曜集会」は大学のゼミ生による取り組みの記録です。
テキストには,石川康宏ゼミナール編『ハルモニからの宿題』(冬弓舎,2005年)と神戸女学院大学石川康宏ゼミナール『「慰安婦」と出会った女子大生たち』(新日本出版社,2006年)を使います。ぜひお持ちください。
なお今年も3年生ゼミで9月11日から14日まで,「慰安婦」問題を学ぶ韓国旅行に出かけます。人数には限りがありますが,同行を希望される方がありましたらメールでご相談ください([email protected])。費用は7万円程度の予定(詳細未定)です。
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