以下は、兵庫学習協の07夏期集中講座第4講(6月26日)に配布したものです。
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〔兵庫学習協・07夏期集中講座〕
講師のつぶやき(3)
神戸女学院大学・石川康宏
http://walumono.typepad.jp/
(1)
いまは電車の中です。JR「京都」から大阪方面ヘもどる途中で書いています。今日は京都で卒業生の結婚式がありました。こういう機会は楽しいものです。
帰りは、新快速に乗れば早いのですが、今日はパソコンを開いての座り仕事をするために、普通電車に乗っています。じつは結婚式の同じテーブルには、京都の財界関係の方が集まっていました。地元の経営者の方たちです。大企業の京都支店ではなく、長く京都でがんばってきた会社や商店、銀行あるいはその連合体の役員さんです。肩書に「経団連」という文字の見える方もあります。
さて、そこで感じさせられたこと、なるほどと思わされたことをいくつか紹介しておきます。
1つは、お話をしていて、教養が豊かだなと感じさせられました。地元京都のことではありますが、祇園祭の歴史やそれぞれの行事の由来が、実にこまかく語られます。中には、自分の家の系譜は南北朝時代に遡ると、その頃の近畿の歴史を語る方もいます。
これは重要なことだなと思わされました。なにせ現代日本の改革に取り組むには、言論の力、豊かな言論の力をもった人間の魅力が決定的ですから。「国の政治は語れるが、兵庫の歴史は知らない」これではダメなのだなと、あらためて感じさせられました。もちろんこの歴史は、運動団体の歴史やいわゆる闘いの歴史だけではありません。より広く、「昔から兵庫はこういう具合に発展してきた、だから今はこの方向に発展することが大切なのだ」と、地域社会の全体を手のひらに乗せて考え、語ることのできる力量が必要なのだと思わされました。
2つは、成功する「人間」についてのとらえ方でした。「アタマがいいだけではダメだ」「アタマはそこそこ賢ければいい」「学級で10番くらいでいい」「それより大切なのは人間をまとめる力」「私は小学校、高校、大学の同窓会の幹事をずっと引き受けてきた」「小学校は50年以上」「それで信頼できる人間関係をずっとつくってきた」「アタマがいいだけの人間は、他人に与えられた仕事をこなす『便利屋』にしかなれない」「大学の友人にも何人もいる」「これは70年間生きて、いろんな人間の人生をみてきた結論だ」。
人間をまとめる力。それは、私たちにこそ身につけることが強く求められていることでしょう。「オレが正しいことをいっても誰もついてきてくれない」「まわりが悪い」という言い方をする人がときどきいますが、その人は自分の「人間をまとめる力」を反省する視角をそもそももっていないということでしょう。これでは勝負になりません。
3つは、後継者の育成を非常に重視しているということです。「経営者本人がどんなに成功しても京都では50点なんです」「それ以上の点にはならない」「自分が成功した上で、自分と同じくらい成功できる後継者を育てるところまでやって、はじめて100点になるんです」「だから次の代でつぶしてしまったら、それは先代の責任になるわけです」。
これも大いに学ぶべき点でしょう。「オレは一生懸命やっている」「だけど後ろの人間が出てきてくれない」「オレが退職したあとは一体どうなるんだ」。こんなことを口にするような幹部ではまったく話にならないということです。後継者が育っていないことを自分自身の責任として引き受ける覚悟が必要です。経営者たちがそういう努力をしているときに、その努力を他人まかせにしているようで、やはり勝負になりません。
4つは、その後継者を育てるうえで重視している資質の問題です。「賢いかどうかではない、華があるかどうか」「華があるというのは、人に好かれるということ、あいつのためならがんばろうとまわりに思ってもらえる人徳があるということ」「そこが一番大切」「賢いだけの人間はむしろそれがジャマをする」。
これは、私たちのまわりの問題に直してみれば、一頃よくいわれた「アイツは組合だけどいいやつだ」「アイツはアカいけどいいやつだ」。そういうまわりの評価が得られる人間になっているのかどうかということですね。さて、みなさんの組織はどうでしょう。みなさん自身はいかがでしょう。
このお話をしてくださった方は、「家業を継ぐものの宿命」といいながら、「大学は商学部しかいかせてもらえなかった」「経営者は会計学をやらねばならない」「大学4年間は家の手伝いはいっさいせずに勉強をした」とも言われていました。
また、こまめに名刺の交換を、いろんな人達としていました。私の方がずっと若いのですが、それでも「先生」「石川先生」と声をかけてくださり、こちらのあれこれの質問にも丁寧に答えてくれました。そして、おそろしく良くアタマを下げます。ですが、それは卑屈であるからそうしているのではなく、戦略的に人間どうしのネットワークをつくっているわけです。
おそらく政治の話をすれば、私とは、かなり意見がわかれるところも多いのでしょう。しかし、その意見がわかれる人達が、これだけしっかり人生や企業(組織)の長期戦略をもって生きている。その大切さを、あらためて実感しました。それにくらべて、私たちのまわりの人々や組織の実態はどうだろう。あまりにもいきあたりばったりではないのだろうか。そう思わされる時間ともなりました。
同時に、考えさせられたのは、こういう人達といかにして政治の領域で手のつなげる関係をつくっていくかということでした。かつての京都の民主府政は、外からの大企業による「開発」は拒否しましたが、それは経済・産業政策が無策だったということではまるでありません。
地元の人たちのくらしをよくする「開発」については、新しい試みを積極的に行っています。中小業者や商店街の自発的な連帯と努力を引き出しながら、その上に行政も支援の手をさしのべる。そういう指導性を大いに発揮しています。そして、結果として、大企業は少ないが、全国で5位という高い県民所得を実現しました。
ひるがえって兵庫の取り組みをみたとき、いまある兵庫県政を批判することはむずかしいことではないが、それにとってかわって兵庫県政をこの手で運営していく政策と能力を、豊かに築き上げることは容易ではない。しかし、そのことにひるまず挑戦する姿勢が必要なのだとあらためて感じさせられました。
「保守との共同」は、こうした「経営者との対話」「接点の模索」「共同の追求」をひとつの大切な内容とするべきなのでしょう。
(2)
以下、前回の講義に対する質問と感想へのコメントです。
〔質問〕
○女性部に大反発受けた方針を出した組合ってどこですか?
――春闘の賃金問題についての方針文書案に「男女平等」あるいは「男女格差」の撤廃・縮小をかかげていなかった組合ですね。すでに内部討論によって問題は克服されていますので、ご当人たちの名誉のために、名前を出すのは控えておきます。
○年功序列・終身雇用は日本独自の雇用形態(だった)のでしょうか?
――そうですね。いわゆる「日本的経営」の1つの柱です。とはいえそれ自体が大企業中心に普及したルールであって、必ずしも中小企業や非正規雇用をふくむ企業社会の全体に浸透したルールではありませんが。なお「年功序列」については、初任給の格別の低さを「正当化」する手段になっているという点も、良く見る必要があります。「年功序列をやめて成果主義・能力主義へ」といった経営者側の提起に対して、若い世代と年配の世代との意見の対立が生まれることがありますが、それは少なからず「初任給の引き上げ」によって解決される問題です。経営者側は年配者の「年功」によって引き上げられた部分をカットして、これを若い世代にまわし、それによって中高年労働者の労働強化を煽り、あわせて若い世代間の労働強化競争を煽ろうとします。それに対して、小さなパイ(総額人件費)を前提したままで「内部の分配」をめぐる議論をするのでなく、中高年の賃金を維持しながら、若い世代に「労働に見合った賃金」を実現していく取り組みが必要です。これは、よくよく議論されるべき問題です。
○男性がなかなか家事をしたがらないのは歴史だと思いますが、女性の一般的な生き方
(幸福感)もまた歴史によって築かれてきたように思います。
――男女関係が歴史の産物だということは、男の生き方・考え方、女の生き方・考え方、いずれも歴史の産物であるということです。なお男は家事をしないという「歴史」は比較的最近になってつくられた歴史です。たとえば封建社会の武家でも、男子の教育は父親が責任をもっています。妻や娘にも自分の個人資産がありました。この問題についても、想像ではなく、現にあった歴史の事実にそって問題を考えるという当たり前の姿勢が大切です。
○「分断」「団結」はとても納得。ただ、「団結」できにくい、ヘロヘロの労働者になっているのが問題。組合に入る(活動する)体力を気力をどうすべきか?
――そこの工夫は現場の実情に応じて多様でしょうね。運動が発展している組合もあるわけですから、そういう組合の実際の努力や工夫に学ぶことが大切だと思います。ただし団結」をよびかける執行部(役員)の呼びかけ方が、過去の「経験」の継承だけであれば、決してうまくはいきません。その点では、執行部の学びの水準の引き上げが急務です。問題を「ヘロヘロの労働者」のせいにする前に、自分たちの取り組みを点検する必要があるのではないかということです。そうでなければ運動をつくるということにはなりません。そのときには、「体力」よりもおそらく「気力」、そして「知力」でしょうし、「魅力」でしょうね。そこを刺激するようなはたらきかけができるかどうか。そこの自己点検をするところから考えられては、いかがでしょう。
○今年4月から離婚時に法的に分割されることになりました。これは主婦の労働が「社会労働」として位置づけられたからでしょうか。
――年金の話ですね? 政府による年金制度の「改革」は全体として、保険料は高くなるが、受け取る年金が低くなるという方向を目指しています。しかし、それだけでは国民の了承が得られにくい。そこで部分的にでも国民からの要求を「改革」に埋め込み、そこをマスコミをつかってウリにして、「改革」全体を正当化するという企みが行われているのでしょう。年金を「分割」しようという事柄自体は国民の要求の吸い上げといえます。しかし、分割される年金の金額そのものの上昇はそこにはありません。そこへの着目を忘れないことが大切だと思います。分割の導入にあたって、政府が主婦労働に対する評価を引き上げたということが推進力になっているようには思えません。
○日本の女性はなぜもっと自己主張しないのだろうか。「家庭科教育」だけによるとは思えない。例えば韓国ドラマは堂々と女性が主張している。このちがいは!
――権利意識の希薄さは、男女に共通していると思います。憲法にはすぐれた条項があるわけですが、そのすばらしい条文のひとつひとつを日本国民は自らの願いと取り組みをつうじて書き込んだわけではありません。現在の憲法を戦後の日本の議会をへて獲得した事実は重要ですが、その条文の内実についての理解や要求が国民の中に必ずしも十分成熟していたわけではありません。「男女平等」をかかげる運動は戦前にもありましたが、それは国民的合意にはかなりの距離があるものでした。このような問題が根本にあると思います。憲法24条に「良性の本質的平等」があることはとても大切で先進的なことですが、その大切さを国民自身が十分理解しないままになっている。それが憲法60年の現実です。だから「憲法どおりの日本をつくろう」という呼びかけは、じつは、その憲法の条項の大切さを、しっかり学び、意義をつかみ、正当な人権の思想や権利意識にめざめた人間をつくるという、前向きの取り組みでもあるわけです。ここでも、歴史の事実に即して、冷静に国民の権利意識をとらえる必要があります。労働者の諸権利、生存権への侵害に対する国民の反撃の低さにも、基本的には同じ問題がはらまれています。
○中国が外貨準備で米国の債務を多量に保有しているようですが、日本が同様の保有をしているのと性格・効果 等にどのような相違があるのでしょうか?
――日本の政府が「円高ドル安」を回避するための「介入」手段としてたくさんのドルをかき集めているのと同じように、中国政府も急速な「元高ドル安」を緩和する手段として大量のドルを保有しています。その限りでは目的は同じです。現在では、中国が日本以上にアメリカ国債を大量に保有しています。その金額は世界一です。ただし、先日の「米中経済対話」でも明らかなように、中期的には一定の「元高」を受け入れるというのが中国の方針です。となると、それに応じて元に換算した保有ドルの価値は低下していくことになるわけです。資産の目減りが起こるわけです。そこで、中国はドル保有による金利収入を引き上げるために、国債からヘッジファンドも活用した資産運用への移行をはかっているわけです。その点では、価値の下がるドルをジッともっている日本に比べれば、やはり中国の方が自立性が高いといえるでしょう。
○女性を専業主婦の地位に貼り付けるための装置の一つが年金制度と思いますが、近時年金分割制度が創設された理由(真の動機)は何でしょうか。
――先ほどのものと、同じご質問でしたね。たとえば雇用機会均等法の「改善」に労働基準法の改悪が抱き合わせられたように、また貧弱であるとはいえ「男女共同参画基本法」がつくられたように、「男女の平等」については、政治的な立場の相違を越えるかなり大きな要求があるわけです。それを無視せずに、しかし、労働者・国民生活への抜本的な譲歩をしないようにするにはどうするか。そういう角度から政府は「平等」要求を取り入れているように思います。年金「分割」でも、同じような取り扱いをうけているのではないでしょう。
○「BRICs」と「南ア・ブ・イの同盟」はどういう関係になりますか。
――「BRICs」は、急速な経済大国化が注目されている国々(ブラジル、ロシア、インド、中国)の総称です。それは、これらの国のあいだに、何か明示的な「同盟」関係があることを表現する言葉ではありません。それに対して、南アフリカ・ブラジル・インドについては、それぞれが積極的な外交交渉をへて合意した「同盟」があります。まずその言葉の区別に注意がいります。その上で、現代の世界は、かつての「アメリカが西側同盟をまとめる」「ソ連が東側同盟をまとめる」といった、少数大国をリーダーとした支配・被支配の同盟の時代ではなく、各国それぞれが自発的に取り結ぶ「同盟」が増える時代となっています。それぞれの国が、自発性・自立性を発揮する、世界政治の主人公となりつつあるということです。南アフリカ・ブラジル・インドについても同様です。
〔感想〕
○けっこう、「生保者はラクしている」と言う民商会員多いのですよ‥‥。ワーキングプアーにも冷たい会員多いのです。でも「自営業者の組合」なのだから、最悪の支払いを受けてる人(生保者は違うか?)や弱者に目配りせねば‥‥と思いました。今年も連合はダメダメな方針でしたがね‥‥。
――階層ごとに国民を分断し、意識的に不団結を助長して、政府に対抗してくる力の団結を阻む。こういう戦略が意図的にとられているわけですね。そして、それがマスコミを活用して行われますから、影響は小さくありません。そこを乗り越えるには、「自分たちこそ大変なんだ」という、「自分たち」しか見えていない視野の狭さをこえる必要があります。「国民生活の全体」に目をとどかせる工夫がいるわけです。そこで有効な方法のひとつは、たとえばNHK「ワーキングプアⅡ」のような、多様な貧困の実態を見せる映像に学ぶことではないでしょうか。食えない若者、母子家庭の大変さ、廃業を余儀なくされる業者、空き缶拾いをせねばならない高齢者。その実態を「見る」ということですね。あわせて、そこには「自己責任」を協調する八代尚宏(経済財政諮問会議員)のような人間も登場します。うまく解説すれば、現在の政治を考えるきっかけにもなると思います。
○女性を家庭に囲い込む政策は配偶者控除や第3号保険者のようにシステムになっている歴史的背景がよく分かりました。
――そういっていただけると嬉しいです。とはいえ、戦後の社会保障をジェンダー視角をもって分析することは、私の今後に残された課題です。どこかで機会をみて、挑戦してみたいと思います。
○資本主義的生産の発展が訓練され統合され、組織される労働者階級を自動的に生むという命題に長い間とらわれていました。今日の講義はそういう意味で画期的でした。
――それは「全般的危機論」が、内にはらんでいた命題でもありました。「全般的危機」論は、「資本主義はその一定の発展段階で解体期をむかえる」といった誤った命題であったわけですが、そこにはたたかう主体がどのように形成されるのかという問題の立て方がほとんどありません。「自動崩壊」論なのですね。そう考えると、ブハーリン・スターリン流の「全般的危機」論が、社会改革の運動にあたえた悪影響は、多面にわたって甚大ですね。なお不破哲三『「資本主義の全般的危機」論の系譜と決算』(新日本出版社、1988年)は、すでにこの主体形成論の欠落を指摘しています。すぐれた研究には繰り返し学ぶ必要があるわけです。
○男女平等は男性にもなるという理論は出してしたが、実際男性の意識はなかなか変わらないのでは? 「食わせている」という優位性を手放したくないので。
――そうですね。しかし、問題は「だからどうするのか」ということです。自民党政治は「なかなか変わらない」、兵庫県政は「なかなか変わらない」、男性上位は「なかなか変わらない」。それは誰でも知っていることです。問題は、それをどう変えていくかということですよね。必要なのは評論や解釈ではなく、改革だということです。そして学問はその改革の指針でなければなりません。たとえば、なぜヨーロッパでは「『食わせている』という優位性を手放す」ことが実際に行われていっているのか、その国民的な意識の転換はどのようにして行われたのでしょう。改革を願うものが、そこに学ぶことはきわめて大切です。私たちをふくむ日本人の権利意識、人権意識は、あきらかにヨーロッパの先進地域にくらべて一時代の遅れをもっています。そこをどう乗り越えていくか、高めていくかという姿勢と力が必要であるわけです。
〔その他〕
○本日も多くの資料をいただきましたが、石川先生のブログを大変有効な情報源として遣わしていただいております。ブログの必要な箇所をワードにコピーし、ある程度の分量になれば、プリントアウトし、製本をしています。現在下記11冊になっています。
* 論文集 * 書きもの(雑誌投稿論説) * 論演会、講演録
* ホームページより 新聞切抜き(06・4~12月)(07・1~4月)
* 大学での授業 * ゼミ旅行(韓国・沖縄)
* 現代経済学ゼミナール(京都学習協) * 和歌山資本論講座
* 兵庫学習協講座 * ジェンダー論講座
――すでにマニアックといっていい領域に入っておられますね。とはいえ、たくさんの方に利用していただくために、ブログはつくっているものですから、そうして活用していただけると嬉しいです。インターネット空間での取り組みについては、本当に急いで習熟する必要があります。ブログなど、誰でも、ただでできるものですし。
(3)
①消費の喚起とあわせて融資を論ずべき
兵庫県の中小企業向け融資の滞納額が増えているという。
担保の評価額が民間とかけはなれているとの指摘もあるが、貸し付け基準を民間と同じくするなら、県の融資事業にはならない。
とはいえ、事態は、たちあがる諸事業に向かう消費をどう高めるかという根本問題の解決を求めている。
その努力の当否を抜きにして、融資制度のあり方だけを議論すれば、結局、さらに中小企業支援を削ることになる。
滞納48億円、14億回収不能に 中小企業向け融資(神戸新聞、6月16日)
兵庫県の中小企業向け融資制度「中小企業高度化資金」の滞納額が約四十八億円に上っていることが十五日までに、県監査委員の行政監査で分かった。融資先の事業が破たんするなどして、回収が不可能になった欠損額は累計で十四億円を超えていた。監査委員は、県の担保評価の甘さが債権回収率の低下につながっていると指摘し、改善を求めた。
報告によると、資金の債権残高は二〇〇五年度末で約五百四十四億円。期限を過ぎても返済がない「収入未済」は約四十八億円で、回収不能となった「不納欠損」は〇五年度だけで約七千四百六十九万円だった。不納欠損の累計額は十四億円を超えるという。
近年、滞納にあたる収入未済額は増加しているが、その九割以上は前年以前からの繰り越しで、繰り越し分の回収率は約4%にとどまっている。滞納分は契約上の時効の五年を過ぎると回収不能になるが、県は返済を猶予するなどして時効を先送りしている。担当の産業振興局は「大口の融資先が破たんすれば、数十億円が回収不能になる可能性もある」と話す。
また、県は担保を評価する際、債務者が事業で取得した建物・土地には取得額の90%で抵当権を設定し、既存の土地も、固定資産税評価額ではなく、一般的にそれより高くなる基準地価から算定している。
監査委員は「これらの評価は金融機関の担保評価とかけ離れており、担保を処分しても債権を回収できない恐れがある」として、評価のあり方の再検討を求めた。
同局は「産業振興が目的なので、貸し付け条件を厳しくすればいいというものでもない。債権回収に最大限努力しながら、融資先の経営状況をチェックし、指導を重ねたい」と話している。(森本尚樹)
中小企業高度化資金 中小企業経営者が共同で新事業に取り組み、土地・建物・設備などを取得する際、資金の最大80%を低利で融資する。約3分の2は独立行政法人中小企業基盤機構、約3分の1は県が拠出。工業団地やショッピングセンターの建設などを想定し、20年間で返済する。災害復旧や中心市街地活性化法などの指定を受けた事業は無利子となる。
②元県議の費用返還を拒否する兵庫県
「事実上の返還」を拒否するとのことだが、ではなぜ「つかわなったから」との「返還」を拒む理由があるのだろう。
福祉・医療・教育など、いつもは財政赤字をいう県が。
要するにこれを前例として、慣例化するのがイヤだということだろうか。
費用弁償355万円「寄付したい」 共産元県議ら 県は拒否(神戸新聞、6月12日)
兵庫県議会を引退した共産党の元県議四人が十二日、本会議や委員会などで議会に出席した際に支給された四年分の費用弁償のうち、交通費の実費を除いた計三百五十五万円の寄付を県に申し出た。県は「純粋な寄付なら受け取れるが、事実上の返還なので」と受け取りを拒否。三百五十五万円は宙に浮いた状態となっている。
四人は、筒井基二、中村雅宥、毛利倫、宮田静則各氏。登庁一日あたり、県内十二ブロックごとに宿泊料を除いて五千-二万千五百円支給される費用弁償から、実際の交通費のみを受け取ることにしたという。政治家の寄付は違法になるため、十日の任期満了を待って寄付することにした。
申し出を受けた県幹部は「寄付に名を借りた返還で、決まった制度で払ったものは受け取れない」と拒否。四人は「もとは県民の税金。県民福祉に役立ててほしい」と主張したが、両者の意見は平行線になったという。
毛利氏が「もらうべきものでないものを返すのは当たり前」とする一方、県幹部は「制度を決めたのは議会。異論があるなら議会で議論すべき」としている。
③兵庫5月の倒産負債は前年の2.1倍に
5月の兵庫県内の倒産が、負債総額で前年同月の2.1倍に達している。
最大の理由は販売不振。業種では建設。
公共事業が全国展開する大手ゼネコンに集中していることのあらわれでもある。
倒産62件前年比17%増 負債総額91億円 県内5月(神戸新聞、6月9日)
信用調査会社の東京商工リサーチ神戸支店がまとめた五月の兵庫県内の倒産(負債総額一千万円以上)は六十二件で、前年同月に比べ17%増えた。六十件台は四カ月ぶり。件数増に伴い、負債総額も九十一億二千五百万円と前年同月の約二・一倍となった。
原因別は販売不振が三十六件で最も多く、放漫経営十件、赤字累積九件と続く。
業種別は建設が35・5%と最多。食品が29%、不動産・サービスが9・7%だった。
同支店は「小さな飲食店や建設業者などは地元の需要が大半で、景気回復の効果が及びにくい。勝ち組企業との二極化がさらに進んでおり、倒産件数が増え続けるおそれがある」としている。(萩原 真)
④兵庫の商店街は平均6.6店舗が閉鎖されている
企業の業績は回復しても、個人消費は伸び悩み、小売業者には厳しい状態がつづいている。
兵庫県内の商店街・市場には、平均6.6店舗が閉鎖されており、理由は「業績不信」と「後継者不足」。
「後継者」問題も、生活と営業の見通しが深くかかわるだろうから、実際には「業績不信」が中心問題。
誰の利益を優先する県政かが、ここでも鋭く問われている。
商店街・市場、空き店舗あり7割 6割強に公的支援(神戸新聞、6月9日)
兵庫県内の商店街・市場の七割が空き店舗を抱えながら営業していることが、ひょうご産業活性化センターの調査で分かった。調査結果から試算すると、商店街・市場一カ所には約五十店舗あるが、このうち約六店舗が閉鎖されているという平均値も判明。十店以上が抜けた商店街・市場は全体の23%に上った。(末永陽子)
二〇〇六年六-七月に、計二百カ所の商店街・市場(運営組合など)を対象に調査。57・5%に相当する百十五カ所が答えた。この回答を基に、同センターや県が調べたところ、一カ所の商店街・市場には平均五十一・四店舗があるが、このうち六・六店舗が閉鎖されていた。
空き店舗のある商店街・市場は全体の73・9%。地域別にみると、「十店舗以上空き店舗がある」と答えた商店街・市場は、神戸=十二(25%)▽阪神=四(20%)▽播磨=五(21・7%)▽丹波・但馬=三(15%)▽淡路=三(75%)。
空き店舗が生じた理由では「業績不振」と「後継者不足」が大半。景況感を「上向き」などと楽観視する答えは7%しかなく、「停滞」などの悲観的な回答が九割に及んだ。六割強が公的支援制度を使っているが、「抜本的な改善に至っていない」との回答がほぼ半数を占めた。
同センターは「企業業績は回復しているが、個人消費は依然伸び悩み、中小の小売業者にとって厳しい環境が続いている」としている。
⑤国保料、兵庫では西宮が最高額
国保料の地域格差だが、同じ収入であっても格差が生じているという。
年収200万円のフリーターでも、2.8倍の格差が認められている。
その格差をできるだけ小さく調整するところに国の役割があると思うのだが。
「地方も自己責任」では、どうにもならない。
政治の役割を見直していかねば。
県内は1・7倍差 西宮10万円超、佐用5万円台(神戸新聞、5月27日)
兵庫県内市町の国民健康保険(国保)の一人当たりの平均保険料(税)は、西宮市(十万八百十六円)が最も高く(全国では二十六番目)、最低だった佐用町(五万七千六百七十七円)の一・七倍だった。
高額の保険料が市議会でも取り上げられている西宮市の担当者は「市民所得が高く、国の調整交付金が低く抑えられる一方、市内には医療機関が充実し、市民医療費が膨らんでいることも一因」と分析する。
担当者は「国保の加入者は市民の四割程度。社会保険加入者との公平性から、市の補助で保険料を下げることも判断が難しい」と話す。
二〇〇五年十月に四町が合併して発足した佐用町は、〇五年度中は合併前の各町の保険料を維持し、〇六年度以降も同水準の保険料を設定している。同町は「都市部に比べ、平均所得が低いことなどが影響しているのでは」とみている。
国保料、自治体間の格差最大4・8倍(神戸新聞、5月27日)
市区町村が運営する国民健康保険の加入者が一年間に支払う一人当たりの平均保険料(税)は、二〇〇五年度は北海道羅臼町が十一万八千二百七十三円と最も高く、最も低い沖縄県粟国村の二万四千七百三十六円の四・八倍だったことが二十六日、国民健康保険中央会などの調査で分かった。
市区町村が定める保険料の一部は所得に応じて算出される。保険料が高い自治体では、二番目の北海道猿払村は比較的高所得の世帯が多いことが原因だったが、ほかではまちまちの傾向が見られた。安い自治体は、年金暮らしの高齢者が多く住民の所得が低いことなどが主な理由だった。
ただ年収が同じでも格差は見られる。「保険料は算定方法が複雑で分かりにくい。所得が同じならどこでも同じとすべきだ」(西村周三京都大大学院教授)と指摘する意見があり、制度の見直しが求められそうだ。
共同通信社が年収二百万円のフリーターでアパートで一人暮らしの二十五歳の独身男性のケースについて最近の保険料を尋ねたところ、羅臼町では十八万四千円(〇七年度)なのに対し、山梨県丹波山村では六万六千四百円(〇六年度)と二・八倍の開きがあった。両自治体の保険料が最高、最低とは限らず、このケースの保険料格差はさらに広がるとみられる。
現在、保険料は、それぞれの国保の財政に見合って定められるが、加入者の所得が低い国保には国や都道府県から投入される公費が多く配分されるなどいろいろな要素が絡み合っており、それらがこうした格差を生じさせているとみられる。
加入者一人当たりの〇五年度の年間医療費を見ると、羅臼町(約二十四万円)より、粟国村(約二十六万円)の方がむしろ高くなるなど、医療費と保険料の関連は見られなかった。
羅臼町は、保険料収納率が低いため国からの調整交付金がカットされ、担当者は「それも一因だが、なぜ保険料が高くなるのかはっきりとは分からない」と説明。猿払村は「比較的高所得の世帯が多いのはホタテ漁が盛んなため」としている。
国民健康保険
農林水産業や自営業者の公的医療保険として始まったが、無職者や退職後に健康保険組合などを抜けた高齢者らが増加し、2001年度には無職者と高齢者で5割を超えた。所得は低いのに医療費は多く、所得に対する保険料負担率が高いのが特徴。負担軽減のためさまざまな形で公費が投入されている。さらに赤字穴埋めなどのために市区町村が一般会計から特別に支出している法定外繰入金は、04年度は3855億円。ほぼ一貫して増加しており、市区町村は公的医療保険制度の一本化を主張している。保険料の収納率向上のため、保険税として徴収しているところも多い。
⑥兵庫県のゴミ問題
兵庫県のゴミ問題だが、なぜ兵庫は全国ワースト5位なのか。
そこの分析はどうなっているのだろう。
レジ袋有料化、廃棄物有料化というのは、結局、すべての責任を県民に押しつけているだけも見えてくるが。
ごみ排出量ワースト5位 兵庫県が改善計画(神戸新聞、5月24日)
一般廃棄物の住民一人当たり排出量が都道府県で全国ワースト5位という汚名を返上するため、兵庫県はこのほど「廃棄物処理計画」を改定した。レジ袋の全県有料化や一般廃棄物の有料化の検討など新たな施策を取り入れることで、二〇一五年には上位16位内を目指す。(小山 優)
旧計画は〇二年に策定。排出量や再生利用量、再生利用率、最終処分量などについて、一〇年までの目標値を設定していた。〇四年時点で、一般廃棄物排出量の県実績は二百五十九万三千トンと、中間目標の二百六十万トンをクリアした。しかし、全国の自治体でも排出を削減する努力が行われており、住民一人当たりの実績は全国ワースト5位となった。一方、再生利用は中間段階の目標値四十九万四千トン(利用率19%)に対し、〇四年の実績は三十六万九千トン(同14%)にとどまった。
新計画は、こうした課題を克服するため、目標値を再設定した。排出量は中間の一〇年時点で二百十六万八千トンと、旧計画二百五十七万四千トンの84%と厳しくした。最終目標の一五年では二百十三万千トンとした。旧計画で達成が困難だった再生利用は、中間段階ではほぼ同程度、一五年で五十三万三千トン(同25%)と緩やかな改善を目指す。
また、旧計画にはなかった目標値として新たに一日一人当たり排出量を定めた。〇三年の実績で千百八十三グラムだったが、一〇年で九四七グラム、一五年で九二三グラムと置いた。
これらの目標を達成するため、レジ袋の全県有料化促進▽生活系廃棄物の有料化促進▽自治体分別収集のランク分け▽バイオマスの活用-などを掲げた。今月中に県と県内の市町で「廃棄物処理協議会」(仮称)を設置し、計画実現に向けて取り組みを強化する。
⑦一部上場兵庫県内7割の企業が増益予測
東証一部上場企業で見ると、兵庫県内の7割の企業が、08年3月期の経常利益で増益を予測。
07年3月期では、県内企業の5割が増収増益、4割は過去最高益を記録している。
県民の生活実態との格差は広がっているようである。
東証一部上場企業、5年連続最高益更新へ 08年3月期決算(神戸新聞、5月16日)
東証一部上場企業の二〇〇八年三月期の経常利益が、五年連続で過去最高を更新する見通しであることが十五日、新光総合研究所のまとめで分かった。海外景気の拡大で機械や電気機器の好調が続くほか、情報・通信などが拡大するため。兵庫県内では四十八社(大証上場など含む)が同日までに決算発表を終え、七割が増益を予測している。
ただ、米経済の先行きや円高進行への懸念があるため、東証一部上場企業の増益率は、四年連続の最高益が確実の〇七年三月期より鈍化。「企業は決算期当初に慎重な予想を出すことが多く、上振れることが多い」(新光総研)ものの、力強さに欠ける国内の個人消費や、先行指標の機械受注統計で陰りのみえる民間設備投資が、今後の不安定要因となる。
新光総研が十四日までに発表した七百七十六社(金融除く)を集計したところ、〇八年三月期の全体売上高予想の伸び率は3・3%、経常利益予想は4・1%となった。未発表企業を含めた約千二百七十社ベース予想でも、増収増益の基調は変わりないという。野村証券金融経済研究所の予想でも増収増益。
兵庫県内企業も、鉄鋼や機械、サービスなど幅広い業種で収益が拡大。〇八年三月期は、産業用ロボットや船舶の需要増が見込まれる川崎重工業や、増産効果が寄与する住友チタニウムなどが増益を予測している。
一方、〇七年三月期は県内企業の五割が増収増益を確保した。世界的な景気拡大を背景に、神戸製鋼所、シスメックス、トーカロをはじめ、四割が過去最高益を更新した。
※単位%。5月14日現在で発表済みの企業(除く金融)、新光総合研究所集計。▲はマイナス。07年は実績、08年は予想
⑧兵庫県 倒産の理由は販売不振と支援策の縮小
4月の兵庫県の倒産は50件、負債総額は153億8200万円。
理由は販売不振が最多で、「中小企業に対する公的支援」の縮小が重要な役割を果たしているとのこと。
大企業への補助金は天井知らずなのだが。
3カ月ぶり100億円超す 県内4月倒産概況(神戸新聞、5月10日)
信用調査会社の東京商工リサーチ神戸支店が九日まとめた四月の県内倒産概況(負債総額一千万円以上)は、負債総額が百五十三億八千二百万円となり、前年同月の約三・五倍に膨らんだ。百億円の突破は三カ月ぶり。神戸や淡路で大口倒産が相次ぎ、全体を押し上げた。
倒産件数は五十件(前年同期比6・4%増)。三カ月連続で五十件台が続いている。原因別では販売不振が六割を占め最多で、赤字累積などが続いた。
同支店によると、県内の景気は良好というが、「中小企業に対する公的支援策が縮小されており、景気回復の波が及ばない企業が苦境に陥っている」という。(萩原 真)
⑨元気の見えない兵庫経済 格下に
兵庫の漁業は「生産量」が、日本海側・瀬戸内海側とも増加したようだが、養殖だけが減っている。理由はいったい何なのだろう?
また県の景気動向については、先行き不透明感が増している。
なお関西経済同友会の提言による「関西州」は、州都を京都におき、経済の拠点を大阪におくというもの。
兵庫の格下扱いに県知事は不満のようだが、兵庫経済に元気がないのは事実である。
兵庫の漁業生産量10%増 06年(神戸新聞、5月5日)
農水省兵庫農政事務所が四日までにまとめた二〇〇六年の兵庫県の海面漁業の生産量は六万二千四百二十三トンで、前年に比べて10%増加した。瀬戸内海のイカナゴや日本海のズワイガニが増えたのが主な要因。
瀬戸内海は四万五千二百八十六トンで前年比13%増。魚種ではイカナゴが二万二千九百五トンで同51%増えた一方、タコは二千三百十四トンで同45%減少した。
日本海は一万七千百三十七トン(前年比3%増)。ズワイガニが千九百八トンで同26%増えたが、ハタハタは同20%減の二千四百八十三トンだった。
このほか、兵庫県の養殖業は六万六千三百二十二トンで五千四十七トン減少した。このうちノリ類は五万八千三百三十九トンで同7%減った。また、カキも五千百二十八トンで同9%減っている。(辻本一好)
県景気動向、2カ月連続50%下回る(神戸新聞、5月2日)
兵庫県が一日発表した二月の県景気動向指数は一致指数が44・4%となり、二カ月連続で好不況の判断の分かれ目となる50%を下回った。先行指数は7・1%となって五カ月連続で50%を割り込み、県統計課は「生産関連が弱含みで、景気は踊り場状態。先行きも不透明感が出ている」としている。
一致指数は、九つの経済指標のうち三カ月前を上回った指標が半数を超えると「好況」と判断される。今回は、所定外労働時間指数が三カ月連続、実質百貨店販売額が二カ月連続でプラス。輸入通関実績は二カ月ぶり、着工建築物床面積は五カ月ぶりにプラスに転じた。
一方、鉱工業生産指数が四カ月連続で三カ月前を下回ったのをはじめ、大口電力消費量や有効求人倍率、企業収益率はいずれも二カ月連続、機械工業生産指数は二カ月ぶりにマイナスとなった。(村上早百合)
関西州提言、兵庫は格下扱い 関西経済同友会(神戸新聞、5月2日)
関西経済同友会は一日、近畿二府四県を一つの行政単位とする「関西州」の実現などを盛り込んだ提言「十年後のビジョン 再び、誇りの持てる国へ」をまとめた。東京都ならぬ「大阪都」を経済の中心地とし、京都を政治の中心に位置づける内容。事実上の格下扱いとなった兵庫からは早速、反発する声が上がった。(小林由佳)
同友会は地方分権を進めるため、関西州政府と人口四十万人ほどの基礎自治体の二層構造を提案。京都に州都を置き、大阪都は阪神地域への先端産業の集積など、産業政策を分担する-としている。兵庫では神戸・阪神間を、内外から投資を呼び込む「世界で最も開かれたエリア」としているが、姫路などほかの地域には触れていない。
神戸商工会議所の幹部は「関西は一つといいながら、結局は大阪中心主義」とぶ然。道州制に慎重な立場の井戸敏三兵庫県知事はこの日の会見で「提案の一つとして受けとめるが、絵に描いたもちのような議論に思える」と述べた。
同友会は「地域エゴを超え地方分権のあり方を議論するため、あえて具体的な提案をした。ただ、兵庫軽視ではない」と強調している。
⑩兵庫は雇用後進県
兵庫県の有効求人倍率はあいかわらず低い。
最新3月の統計で、全国の1.03倍に対して兵庫県は0.93倍。
正社員の倍率となると、全国0.63倍に対して兵庫県は0.55倍。
わが学生たちも苦労するはずである。
3月の有効求人倍率 兵庫県は前月比横ばい(神戸新聞,4月27日)
兵庫労働局が二十七日発表した三月の兵庫県有効求人倍率(季節調整値)は前月と同じ〇・九三倍だった。新規求人、求職ともに伸び悩んだ結果といい、同局は「求人に一服感はあるが、全体として雇用情勢は堅調に推移している」とみている。
新規求人は前年同月比2・9%減で、二カ月連続してマイナス。新規求職も同8・0%減となり、二カ月連続で前年を下回った。
新規求人を産業別にみると、製造(3・6%増)や医療・福祉(12・0%増)、運輸(同18・5%増)などは増加。一方、建設(22・4%減)や卸・小売り(15・9%減)、金融・保険(15・2%減)などは減少した。
正社員の有効求人倍率は〇・五五倍で、前月と同水準だった。
また、地域別の有効求人倍率は神戸、阪神、但馬、淡路が一倍を割り、東播磨、西播磨、丹波は引き続き一倍を超えた。
一方、二〇〇六年度の有効求人倍率は〇・九五倍で、前年度比〇・〇九ポイント改善した。改善は五年連続。
求人倍率1.03倍に低下=3月、失業率は横ばい(時事通信,4月27日)
厚生労働省が27日発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.03倍で、前月から0.02ポイント低下した。雇用の先行指標とされる新規求人数は前年同月比4.6%減少。同省は「新卒者採用や非正規雇用の正社員転換が増えた影響で、採用が控えられた可能性がある」(職業安定局)としている。
正社員の有効求人倍率は0.63倍で前年同月を0.01ポイント下回った。マイナスは2004年11月の調査開始以来初めて。
また、06年度平均の有効求人倍率は1.06倍で、前年度を0.08ポイント上回った。1992年度(1.00倍)以来14年ぶりに、年度ベースでも1倍台に乗った。
一方、総務省が同日発表した労働力調査によると、3月の完全失業率(季節調整値)は4.0%で、5カ月連続の前月比横ばいとなった。
完全失業者数は前年同月比8万人減の281万人。年度末に伴うパートタイム労働者などの契約切れが増えたとみられる。就業者数は同43万人増の6351万人だった。
06年度平均の完全失業率は4.1%で、前年度比0.2ポイント改善した。
⑪兵庫県が湯水のような補助金をだす松下 純利益過去最高に
兵庫県が、各種「補助金」として175億円をプレゼントした松下だが、純利益は過去最高の見通しだという。
あらためていうが、兵庫県よ、金の使い方がおかしすぎないか。
尼崎第2工場の稼働、1カ月前倒し=プラズマテレビの販売好調で-松下(時事通信,4月27日)
松下電器産業の大坪文雄社長は27日の決算発表の席上、現在建設中のプラズマディスプレーパネル(PDP)を製造する尼崎第2工場(兵庫県尼崎市)の稼働時期を当初予定より1カ月前倒し、6月から量産を開始することを明らかにした。
プラズマテレビは同社の主力商品で、2006年度は350万台を販売。07年度は「500万台以上の販売を目指す」(大坪社長)方針のため、稼働時期を早めることにした。同社は尼崎工場の隣接地に2800億円を投じ、世界最大のPDP新工場(09年5月稼働予定)を建設する方針も決めている。
松下、今期純利益が過去最高の見通し(日経新聞、4月27日)
松下電器産業の業績拡大が続いている。27日発表した2007年3月期の連結決算(米国会計基準)は、最終的なもうけを示す純利益が2171億円と前の期に比べ41%増えた。デジタルAV(音響・映像)製品の好調が続き、08年3月期は純利益が2500億円と前期比15%増え、1985年11月期以来の過去最高となる見通しだ。
前期の売上高は9兆1081億円と2%増え過去最高となった。主力のプラズマテレビは販売金額が5478億円と3割増。製品価格が2割強下落したが、台数が8割近く伸びた。液晶を含む「大型薄型テレビ全体に占める世界シェアは18%に達した」(大坪文雄社長)という。エアコンや冷蔵庫などの白物家電も順調で携帯電話の落ち込みを補った。
⑫今年度も兵庫県への企業進出好調
年度が変わっても,兵庫県への企業進出が続いている。
誘致補助金に上限がない唯一の兵庫県だが,これらのからくりの全体をわかりやすく示す作業は,どこかで行われていないものか。
兵庫県内への企業進取、2007年度も好調(日経新聞,4月26日)
神戸市と兵庫県加東市は25日、土地購入を伴う3社の企業進出が決まったと発表した。神戸市のポートアイランド2期地区には2社が、加東市の「ひょうご東条ニュータウンインターパーク」には1社が進出する。県内の工場立地件数は2006年に全国最多(115件)となり、07年に入ってからも生産拠点・物流拠点の新設が好調のようだ。
カレー粉や香辛料を製造・販売するハチ食品(大阪市)はポーアイ2期地区の3300平方メートルの土地を購入。10月の稼働を目指し物流施設を建設する。土地も含めた総投資額は約7億円。「配送のしやすさや土地の価格でポーアイに決めた」という。
食品や医薬品の輸送を手がける津門(兵庫県西宮市)も約1300平方メートルの土地を買い取り倉庫兼事務所を新設する。総投資額は約2億5000万円。「ポーアイには顧客企業が集まっている」ことが決め手になったという。
⑬大農支援,ポスト争い,大企業支援
兵庫県内の話題3題である。
農業「構造改革」は大規模農家だけへの支援増をすすめるものとなっている。その国の動きへの足早い同調ということだろう。
それによって家族経営など小規模農家で行われてきた工夫や成果は,支援の外に放り出される。これは農業支援ではなく大農支援ということである。
背後には,国際競争力のない産業は淘汰されて当然だとの思想がある。ただし,自給率のますますの低下についてはまるで無頓着であるようだが。
他,県会副議長ポストをめぐる自民・民主の争い。ただし,これが県政運営の争いに発展する見込みはいまだなし。
県内の公共事業費低下については,但馬空港滑走路延長,武庫川ダム建設,神戸空港を関空とむすぶトンネル建設など,いまだ油断はまったくならない。
他方で,大企業への利益保障が,土建事業からさらに直接的な誘致補助金などに力点を移しているのは事実だろう。
兵庫県内の農業生産法人数、3年で25%増加(日経新聞,4月17日)
兵庫県内で集落や個人が法人を設立して農業を営む農業生産法人が増加している。県のまとめでは年初時点で前年比7.2%増の89社となり、3年前との比較では25%増えた。農水省が昨年、大規模農家に対し手厚く助成金を支給する制度を始めたことを受け、法人化で規模を拡大する動きに弾みがついた格好だ。
八幡営農組合(加古川市)は642戸の農家が合計330ヘクタールの土地を耕作するために2005年に設立した。農産物価格が下落した時に国から助成金を受けられる基準を満たしたほか大型機械の導入で作業が効率化した。
県は「コメなど農産物取引の規制緩和に対応して集落単位で法人化を目指す動きが今後も増える」(農林水産部)と予想する。
個人農家も法人化すれば社員の採用や事業の継承がしやすくなり規模拡大につながるため、株式会社に衣替えする例も増えている。
県は農業生産法人を含む大規模農家が耕作する農地の比率を04年度の28.9%から15年度に66.6%に高める計画だ。
自民過半数割れ危機 県会(神戸新聞,4月21日)
県会各会派は二十日、改選後の新しい議会活動の方針と新役員を発表した。過半数四十七人の確保を目指す自民は、現段階の見込みは「半々」とし、初の過半数割れの危機に陥るが「県政の意志決定は自民だ」と最大会派であることを強調した。民主は「自民を過半数割れに追い込む」と意気込む。今年七月の参院選をにらみ自民、民主のつばぜり合いは激しさを増している。
県議選で大敗しながらも四十三人を確保した自民。新幹事長になった加茂忍議員は「事務局に人数を報告する二十三日には四十五人、任期開始の六月十一日には過半数四十七人の確保を目指す」とした。過去独占してきた正副議長のうち副議長ポストが焦点となっており、加茂議員は「譲るつもりはない」と強気の姿勢をみせた。
民主は、改選前の十九から二十一議席に伸ばしたことを背景にポストを要求する方針。新幹事長に就任した芝野照久議員は「(自民を)過半数割れに追い込むためにも無所属組を加えたい。最高二十五人になる可能性がある」と勢力増を示唆した。
公明の団長、野口裕議員は「自民が過半数割れとなれば影響は大きい。当局提案がスムーズに通らなくなるかもしれない。福祉や子育て支援はじめ、公明の主張はこれまで以上にしっかりとやっていく」と話した。
共産、みどりの風、無所属議員らは、いずれも議案提出に必要な八議席に満たないため、施策ごとの連携ができるかを探っている。
県内公共工事、11年連続前年割れ 06年度(神戸新聞,4月19日)
西日本建設業保証兵庫支店が十八日まとめた二〇〇六年度の兵庫県内公共工事請負金額は、三千百六十七億六千三百万円(前年度比19・2%減)となり、十一年連続で前年割れとなった。
大型公共工事抑制の傾向が続いていることに加え、〇五年度に集中した台風被害復旧工事が大幅に減少したのが主因。
地区別では阪神競馬場の馬場改造工事の受注が済んだ「阪神北」や、〇五年度に膨らんだ災害工事の反動が出た「淡路」で半減。神戸・ポートアイランドなどでの大型工事が一段落した「神戸市」でも減少した。
一方、住宅地開発などが進む尼崎、西宮、芦屋の「阪神南」でインフラや学校整備などが進み、前年度比11・9%増と県内で唯一増加した。
なお、三月単月では請負金額が三百二十五億九千二百万円(前年同月比5・8%減)と四カ月ぶりのマイナスとなった。(浅野真紀)
⑭兵庫県自民党は歴史的大敗 政局の流動はつづく
地方選挙前半戦の兵庫県の結果である。
全国的にも,自民党の大幅後退と民主党の前進が特徴となっており,また諸派や無所属が減少する政党間闘争の激化を示す選挙となっている。
自民党の敗北は,地方政治の状況だけでなく,国政に対する国民の不安や不満を反映したものだろう。
他方で,それによる自民離れを民主党で受け止めようとするのが,この間の財界の基本戦略。そこを掘り崩すには,まだ時間がかかりそうである。
とはいえ,夏の参議院選挙に向けて,自民党に起死回生の一策があるとは思えない。他方で,民主党にも自民党に「対抗」しうるマニュフェストはない。
したがって,この変化の方向は固定されたものではない。
実際,今回の選挙でも,隣の大阪市議選では,共産党が民主党を上回る3議席増を達成している。
頼みは「自民か民主か」という,またしてもマスコミが設定するであろう「政治選択の狭い枠」ということにしかならないだろう。
そこを打ち破るための自力が求められているわけだが,それは手の届かないところにあるものではないということである。
改憲反対勢力が,民主の「創憲」路線(海外派兵を自衛隊の本来任務とした防衛省法案に民主党は誰も反対票を投じていない)をどうとらえていくのか,そこまで学びを深める必要がある。
もちろん,その変化を,まずは地方選挙後半戦に生み出していく必要があるのだが。
自民が歴史的大敗 兵庫県議選(神戸新聞,4月9日)
兵庫県議選(定数九二)は八日、投開票され、最大会派の自民が、公認・推薦で三十八議席(無投票当選を含む)にとどまった。前回、前々回の四十三議席を下回る歴史的大敗となった。政務調査費の使途をめぐる問題から議会改革の進め方が最大の争点に浮上。改革推進への期待が新人二十四人を当選させる追い風となり、自民は現職議長や県連選対委員長など、中堅ベテラン勢が相次いで落選した。自民は、保守系無所属の当選者九人を会派に加えれば過半数の四十七議席になるため、今後、多数派工作に乗り出す。一方、同日投開票の計四十四道府県議選で、自民の議席占有率は50未満になった。
兵庫県議選で、民主系が二十議席に伸ばす一方、共産は三減、一議席を維持していた社民、新社会がともに議席をなくし、二大政党への流れを印象づけた。
県議選は前回より十人多い百四十四人が立候補。無投票を除く三十七選挙区で八十一議席を百三十三人が争った。
同日投開票の神戸市議選(定数六九)は総定数が削減され、戦後最少の九十三人で争い、世代交代が進んだものの、各会派ともに現有議席をほぼ維持する結果となった。
昨年の市議汚職事件に対する有権者の反応が注目された中、事件を受けて結成された政治団体「神戸改革フォーラム」の現職二人と、新人一人が当選した。
党派別では自民、民主、公明が一増。共産が現有議席を維持した。
2007年 ひょうご統一地方選 議会とは議員とは -第3部 自民大敗 上.誤算(神戸新聞,4月10日)
政調費ショック大きく
神戸市中央区、兵庫県庁の北側。自民党県連事務所に集まった幹部らは、開票作業が進むにつれ、顔色を失った。
県会議長、元副議長、元県議団副幹事長…。ベテラン勢が続々と議席を落としていった。
八日投開票を迎えた県議選。過半数の四十七議席を目指す自民は、公認・推薦を四十九人に絞り込み選挙に臨んだ。結果は、現職七人を含む十一人の落選。獲得した三十八議席は、予想をはるかに上回る大敗だった。
一方で、当選した保守系無所属組は十人。「もし全員取り込めても過半数ぎりぎりだ」。九日午前二時すぎ、県連で会合を終えた幹事長の原亮介(63)が声を振り絞った。
前回、前々回も四十三議席で過半数を割ったが、多数派工作の難しさはその比ではない。
■ ■
自民には逆風下の選挙だった。政務調査費の不透明な使途が指摘され、争点の一つとなった。
「市民オンブズ尼崎」などから不適切な使途を指摘された県議の一人、自民現職の門信雄(57)。立候補した定数一の芦屋市選挙区は、県内屈指の注目選挙区となった。対立候補は、議会改革を掲げる新人、山田美智子(60)だった。
門は、政務調査費をめぐり、車のリース代として報告した約百十万円が、実際はローン支払いだった。私有財産の形成につながる使途は認められていなかった。
「自動車販売会社の担当者と相談し、負担が軽いからと安易に考えた」
選挙告示前の三月四日、門は後援会総会で支持者らに弁明した。全額返還したことや、不起訴になった経緯の説明にあいさつの大半を割いた。
県連選対委員長を務める門は、県議団幹事長や副議長を歴任。改選後は議長候補としての呼び声も高かった。県連は、実績と知名度に勝る門が逃げ切ると分析。独自調査では、山田とは大差が開き、県連は当選をほぼ確信していた。
しかし、ふたを開けると八百六十七票差で落選。同様に書類送検された自民現職で、元議長の清元功章(78)も、姫路市選挙区で議席を失った。
一夜明けた九日、知事井戸敏三は定例会見で「期待が大きいほど、信頼を失えば結果は厳しくなるということを、われわれも自戒しておかなくてはならない」と、結果の深刻さを受け止めた。
■ ■
自民の「誤算」は、政務調査費問題だけではなかった。
県議選で初めて取り組んだ公募方式による候補三人のうち、当選者は、神戸市垂水区選挙区の新原秀人(44)ただ一人。自民票に無党派層の上積みを期待したが、思惑通りとはならなかった。
対して、都市部で無党派層の受け皿になったのは、山田をはじめとする「市民派」だった。「政務調査費の全面公開」など、訴えの中身が有権者に分かりやすかった。
尼崎市選挙区では、市民オンブズ尼崎の世話人丸尾牧(42)が市議からくら替えし、初当選。現職稲村和美(34)とともに、尼崎市長白井文の支援を受け、自民元職や共産の二人にも競り勝った。
県議会は丸尾、山田、稲村の動きに神経をとがらせる。政務調査費をめぐっては、市民オンブズが情報公開で入手した資料を基に、議会は厳しい追及を受けた。しかし今度は、丸尾らによって、議会内部からの監視が強まる。
「台風の目がどう動くのか」。県幹部らも注視する。(敬称略)
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兵庫県議選は、自民の大敗で終わった。夏の参院選を控えるだけに、影響は計り知れない。過半数を大きく下回った背景と波紋を探る。(統一地方選取材班)
2007年 ひょうご統一地方選 議会とは議員とは -第3部 自民大敗 下.変化(神戸新聞,4月11日)
ほころび見せた「牙城」
現職議長の落選は、兵庫県会にとって初めての事態だった。
「高齢と、準備不足が響いた」と、議長を務める自民現職、長田執(75)の後援会幹部。八日夜、県議選宍粟市選挙区の開票結果を受け、支持者が集まった事務所は静まり返った。
長田と競り合い、初当選したのは、十六年ぶりの再戦となった元山崎町長高嶋利憲(54)。選挙参謀として、かつて長田の選挙を支えた元宍粟市議春名哲夫(55)も加わり、保守票が分裂する中、展開が読めない混戦だった。
一九九一年に高嶋らを制して初当選した長田は以後、連続三回無投票で当選した。五選を目指したものの、選挙はまだ二度目。約一万一千人の後援会に支えられていたが、久しぶりの選挙に動きは鈍かった。支持者の多くは高齢で、選挙戦に入ってからも「やり方が分からない」と戸惑った。
取り付けた約二十団体の推薦は、すべて団体側から申し出てきたもの。会員約二千人を抱え、支援する地元商工会は終盤、組織の引き締めを図ったが、流れは止められなかった。
ある若手会員は「(長田の)政治的手腕に魅力はあるが、世代交代を期待する声がかつてないほど強かった」と明かす。
対する高嶋陣営。「必勝」の張り紙は、市長や国会議員から届いたわずか三枚だけだった。業界団体の推薦が全くない高嶋は、細かな地域票の掘り起こしで勝利を呼び込んだ。
■ ■
宍粟市をはじめ、自民は今回、牙城である一人区で、公認・推薦の七人が敗れた。
十二年ぶりの選挙となった神崎郡選挙区もその一つ。三期十二年の実績を持つ前川清寿(65)は「県から予算をとってきてこそ議員といえる」と選挙期間中、力を込めた。
県議団幹事長ポストをうかがう中堅議員として、道路や河川整備の必要性を訴えた。保守系町議や区長会、婦人会など地元組織をフル回転。人海戦術を繰り広げた。
対する新人で民主、社民、新社会の推薦を受けた上野英一(53)の個人演説会では、会場が閑散とした日もあった。上野は旧大河内町(現神河町)の町長を二年半務めたが、市川、福崎町での知名度は未知数だった。
「陳情型政治をなくす」。前川を意識した明快な訴えもどこまで地域に届くのか、組織のない上野陣営には不安が消えなかった。しかし、得票は三町すべてで上野が上回った。
落選が決まり、前川は「もう古い議員はいらないということだろう」と事務所でこぼした。
「組織の頭をおさえる選挙は、もう通用しない。今回の選挙は、時代の変化を映し出しているのかも知れない」。郡内の町議らは、選挙結果をこう受け止めた。
■ ■
実績と組織力も備えた自民現職たちの落選。今回の県議選は、都市部以外でも、有権者の選択基準が多様化している実態を示した。
十六年ぶりの選挙戦となった宍粟市のほか、二十四年ぶりの(旧)飾磨郡選挙区でも、自民推薦候補が落選。自民の牙城のほころびを見せつけた選挙戦だった。
「ライバル候補が名乗りを上げることすらできない無投票こそが実力の証しだった」。自民のベテラン県議は「政治的な力が強くなる半面、いざ選挙になると弱い」と続けた。
夏には参院選が控え、政治決戦の年と位置付けられる今年。自民県連幹部らの悩みは深刻だ。弱まる組織。早まる変化。流れを見極める時間は限られている。(敬称略)
⑮なぜ兵庫県が工場進出第1位?
敷地面積1000平方メートル以上の工場・研究所などの進出先で,2006年は兵庫県が一番だったという。
尼崎の松下は,インフラ,補助金,低賃金不安定雇用が工場拡大の推進力だが,県企業立地課のいう「景気拡大」効果はどこまで本当だろう。
『データでみる県勢2007年版』によると,①失業率が高く求人倍率が低い,②県民所得・経済成長率が低い,③勤労者世帯の家計水準が低いなどの特徴が見えるのだが。
兵庫県が工場立地全国1位 2006年(神戸新聞,4月7日)
兵庫県内に立地した工場の件数(用地取得面積一千平方メートル以上)が二〇〇六年は百十五件で、前年比44%増となり、都道府県で一位となったことが六日、兵庫県のまとめで分かった。立地件数は二〇〇〇年以来、七年連続増加し、全国一となるのは一九八五年以来二十一年ぶり。県企業立地課は「景気拡大が中小製造業にも波及し、県内や近畿圏からの中小企業の工場立地が目立った」としている。
総立地件数のうち新設件数は九十五件で同44%増だった。立地面積は一二一・一ヘクタール、同63%増で、面積では全国都道府県で四位だった。
業種別では、金属製品製造が三十件で最も多く、次いで、一般機械器具製造の二十件、食料品製造、プラスチック製造、化学工業が各八件と続く。
地域別にみると、神戸・阪神地域が五十八件でトップ。次いで東播磨の三十五件、西播磨の十五件など。但馬、丹波、淡路は低調だった。
また、定期借地権の導入効果で産業団地への立地が依然好調。産業団地への立地は七十五件で同67%増。内訳はポートアイランド2期(神戸市)が十二件と最多で、次いで尼崎臨海地区(尼崎市)が八件、高砂工業公園(高砂市)七件などが多かった。(村上早百合)
工場立地動向調査、兵庫県が21年ぶりに全国一(朝日新聞,4月6日)
経済産業省が6日発表した06年の工場立地動向調査(速報)によると、兵庫県に進出を決めた工場・研究所(敷地面積1千平方メートル以上)が前年の1.4倍にあたる115件となり、21年ぶりに全国一になった。近畿2府5県の合計は、前年比16.3%増の271件で、67年に調査を開始して以来初めて4年連続で増えた。
全国の立地件数は、前年比15.4%増の1782件。都道府県別の2位は群馬県(111件)、3位は静岡県(102件)だった。近畿の府県別件数は、滋賀44(前年35)、大阪41(同45)、京都30(同33)、奈良21(同11)、福井14(同23)、和歌山6(同6)。金属部品や工作機械、製造装置などの工場が多いのが特徴だ。
兵庫県内では昨年、松下電器産業が尼崎市にプラズマテレビ用パネル工場の増設を決定。また、コニカミノルタが神戸市に液晶テレビ用のフィルム工場の増設を発表するなど、先端技術の製品や素材の工場を中心に進出が目立つ。
兵庫県への進出が増えたのは、高速道路や港湾、エネルギーなどインフラが整っていることが大きい。また、県が関連する許認可手続きの迅速化を進めて、企業側のニーズに応えていることも要因になっている。
⑯大企業奉仕と引き換えの兵庫県職員削減
兵庫県が,財政の改善を名目に,県職員の賃金を引き下げ,さらに10年で2000人の職員減をふくむ「計画」を発表した。
松下プラズマへの175億円プレゼントや,無駄な開発事業など,真っ先に見直すべき項目は話題になっていない。
「行革」といえば,またしても福祉・教育関連予算の削減,そして関連職員の削減ばかりという結果にならないように注意がいる。
兵庫県が公債費比率改善計画 10年で職員2千人減(神戸新聞,3月29日)
新しい財政指標「実質公債費比率」で、兵庫県が全国の都道府県でワースト三位の19・6%だったことを受け、井戸敏三兵庫県知事は二十九日の会見で、二〇一八年度をめどに公債費比率を改善するための「県公債費負担適正化計画」を発表した。十年間で財政の危険水域を脱し、地方債の発行を国の許可なくできる18%未満にする。具体的な行革の進め方は、〇七年度後半に定める予定の「ポスト行財政構造改革推進方策」に盛り込む。
計画の試算によると、今後の同比率の見込みは〇六年度決算で20%を超え、年度ごとに上下しながら一五年度に最悪の22・3%となり、地方債発行が制限される25%に最も近づく。その後は減少に転じて、一八年度決算で18%を切る17・6%になる見込み。
ただし、試算には、職員給与を国と比較する指数を現在の102・5から100に削減したうえで、定員を毎年二百人削減し、行政経費と投資的経費をともに毎年3%ずつ削減するというかなり厳しい前提条件を当てはめている。このペースで職員と行政・投資的経費を削減しつづけると、十年後には職員数は二千人減、事業費用に使える経費は三割減となる。
県財政課は「あくまでも試算のために想定した数字で、行革の中身は別に定める」としており、これに代わる歳出削減の策などを組み合わせながら計画の達成を図るとしている。井戸知事は「十年かけて確実に18%未満にする」とし、全事業の抜本的な見直しなどを新しい行革の枠組みに組み入れたいとしている。(畑野士朗)
⑰超赤字但馬空港に拡張調査予算?
あきれた兵庫県の空港行政である。
「たまちゃんが行く」によると,
豊岡の但馬空港が空港利用料等で得ている収入は,
なんと年間265万円。
つまり需要がまったくないということである。
収入の不足分は,年額約4億5000万円の税で埋められており,
それにもかかわらず,
この空港の滑走路拡張調査が開始されるという。
東京との定期便を飛ばしたいとのことである。
300メートルの拡張に必要な費用は100~150億円。
そのための調査費500万円が,
07年度の兵庫県予算についたとのこと。
この予算を成立させたのは,
自民党・公明党・民主党・社民党のオール与党。
これを税の無駄遣いといわずに、なんという。
⑱中小企業への保証付き融資減少へ?
中小企業融資の制度「改革」があるとのこと。
結果として,中小企業には保証付き融資が受けづらくなる。
国による弱肉強食型の「改革」から,いかにして中小企業の経営を守るか。
県独自の施策が求められる。
「業務委託で開拓強化」兵庫県信用保証協会理事長(神戸新聞,3月26日)
中小企業融資に使われる公的信用保証制度が、十月に大きく変わる。現行では各都道府県などの保証協会が融資全額を保証し、企業が破たんすれば協会が全額の返済を肩代わりしたが、新制度は返済率が80%に縮小される。金融機関が融資に二の足を踏みかねない上、保証料収入減で保証業務への影響も懸念されるが、神田栄治・兵庫県信用保証協会理事長(61)は「業務委託などで収益基盤を盤石にする」と話す。(記事・大久保 斉、写真・田中靖浩)
-制度改正が借り手に与える影響は。
「金融機関が融資額の二割に対し、新たに貸し倒れリスクを負うため、貸し渋りの増加が懸念される。対策として従業員二十人以下の企業には、一定額以内で100%保証を継続する」
-協会への影響は。
「保証元本が減る分、保証料収入減が予想される。一方、返済額の急増に備え中小企業金融公庫に支払う信用保険料は、現行の100%保証の料率が続く模様で、厳しい状況になりそうだ」
「収入増には、新しい借り手の発掘が不可欠。破たん先からの回収は外部の債権回収会社に移管し、人材を新規開拓に充てる。二〇〇八年までに、無担保融資の回収を全面移管する計画だ」
-コスト低減策は。
「顧客の利便性や職員の移動に配慮して、神戸事務所と尼崎支所の担当区域を再編する。神戸からは宝塚、芦屋、西宮、三田の四市を尼崎支所に移す。県内の全事業所で保証付き融資を利用している割合は36%だが、40%台に引き上げたい」
-県内中小企業の情勢をどう見る。
「保証付き融資の借り手のうち少なくとも六分の一は業績が振るわず、返済期間の延長や、返済額の変更などで対応している。製造業は比較的良好だが、公共事業の抑制や個人消費の伸び悩みで建設、卸・小売業が苦しい。業種間格差がある」
【メモ】
中小企業が保証付き融資を受ける場合、金融機関への利子に加え、融資額に応じ信用保証協会に保証料を支払う。借り手が破たんすれば、協会は金融機関に融資を肩代わり返済する一方、借り手からの融資回収にあたる。兵庫県信用保証協会の保証承諾額は4207億6200万円(06年4月-07年2月末の累計)。
(4)
「階級闘争の弁証法」と京都民主府政の教訓
2007年6月24日
神戸女学院大学・石川康宏
http://walumono.typepad.jp/
1・はじめに
・政治闘争の現段階を中長期の歴史に位置づける
・「憲法県政」実現への展望を切り拓くために
2・一斉地方選挙の争点
①政党配置の特徴
・進む「オール与党」化――47都道府県中38都府県(03年は34都府県)で共産党を除くオール与党,28府県に議席をもつ社民党も21府県で,東京も宮城も兵庫も
・対決点の根本は自民党(応援)政治の継続か住民本位への転換か
・オール与党政治拡大の転換期は80年代(革新自治体づくりの運動への財界の対応)
②地方自治の変質をすすめる「構造改革」
1)福祉切り捨ての「地方行革」
・「住民福祉の機関」の放棄,地方自治の根本否定の動き
・国の悪政に地方の悪政を上乗せ(防波堤の役割果たさず),県民緑税(800円),保険証取り上げ(01年1300世帯から06年9300世帯),公共サービスの民営化
2)大企業呼び込みのインフラ整備,誘致補助金
・従来型公共事業にくわえて新しい呼び込み事業も,財界奉仕のための公共事業
・43道府県の誘致補助金制度,限度額10億以上25県,50億以上5県,兵庫は唯一上限なし,松下電器に175億円(しかも正規雇用6人〔2.48%〕,非正規236人〔派遣から1年で請負に〕)
・従来型公共事業、神戸空港の破綻,1月の搭乗率52.3%,空港北側の土地が売れず2000億円の借金がかえせない,赤字のベイシャトル再開と海底トンネルの構想,歯止めなき土建奉仕
3)税金を談合・不正支出で私腹を肥やす財源に
・共犯のためチェックができないオール与党
4)国政による地方社会の破壊
・国政による自治体攻撃,「平成の大合併」3232市町村が1807(3月)に,「三位一体」改革で補助金・地方交付税削減
・国政による地域社会の破壊,地域間格差の拡大,224公立・公的病院の廃止・休止,出産できる病院診療所が5000から3000へ,郵便局の集配業務廃止が1048局,公営バス廃止,大型店舗の出店・撤退の野放し
5)焦点は共産党の前進が実現できるかどうか
・オール与党との正面からの対決、そこでの力関係の変化がオール予想の切り崩しを生む
・市民の運動との共同,議会への紹介,議会のチェック
・「憲法県政」実現のためにも議会に強い共産党を,070207「憲法県政の会」第2回総会から――松下への175億円で学生・生徒への奨学金を,ポケット労働法の無料配布を,県民に「命の格差」をつくるな,地域破壊と闘う郵政労働者,戦争計画にまきこまれない「非核の瀬戸内海」を
3・政治闘争の現段階を中長期の歴史の中に位置づける
①革新高揚の時代,財界の反撃,とまらない自民党政治の衰退
1)60年代後半からの共産党の躍進と革新自治体の広がり
・1975年には全人口の43%が
・支持を広げるのにふさわしい政策の発展,自治体労働者論,教育労働者論など
2)後退する自民党が打ち出した戦略的目標としての共産党封じ
・1973年自民党「自由社会を守ろう」キャンペーン
・1976年春日違憲質問――支配層の結束した巻き返し
・社共共闘の前進と飛鳥田社会党の右転落,80年社公合意,革新自治体の解体へ
・以後オール与党が支配的に
3)革新懇話会運動の誕生
・1980年,他党に門戸を開きながらの共産党と無党派との共同の追求
・1989年の「地殻変動」,徳島市長選39.7%,千葉県知事選44.7%,名古屋市長選43.8%の得票
4)体制選択論と小選挙区制導入
・1989年天安門,東欧・ベルリンの壁,91年ソ連崩壊,共産党への集中攻撃
・89年マスコミを首謀者の一部にからめとった小選挙区制推進,マスコミ翼賛
・93年「非自民」連合――2大政党制への最初の企て,小選挙区制と政党助成金
5)本格的な2大政党制の追求
・94年村山内閣で社会党の衰退は決定的に
・以後、自民党の単独政権は97年11月~99年1月のみ,連立の常態化
・96年727万票(13.1%),98年820万票(14.6%),共産党過去最高,国会での「排除の論理」が瓦解
・2000年公明党・創価学会による反共攻撃
・2002年経済同友会――アメリカ型2大政党へ,03年民主党・自由党合併(第二自民党へ),03年日本経団連の政党通信簿,マスコミの共産党無視
6)自民党(オール与党)政治と国民との矛盾
・侵略戦争の名誉回復,アメリカいいなり,ルールなき資本主義
・小泉内閣が3つの矛盾を急速に深刻化
・矛盾の解決策を正面からを提示する共産党,根本の矛盾に無策な民主党
②地方への支配と地方(住民)自治の破壊の動き
1)地方自治の本来の使命と役割「住民の福祉の増進を図ること」(第1条の2)
・革新自治体の精神
2)90年代オール与党による自治体の「開発会社」化
・「公共事業50兆円,社会保障20兆円」の逆立ち政治
・土建国家に奉仕する自治体
3)2000年代オール与党による自治体の存在意義の否定
・「地方行革」による自治体の「営利企業」化――社会保障・教育の放棄
・「開発会社」化の破綻と衣替え――都市集中による無駄の継続
・市町村合併と地方財政切り捨てによる地方自治制度の破壊――財界に奉仕する地方づくり(道州制)
・国の戦争計画への地方の取組
4)自民党(オール与党)政治と住民との矛盾
・財界・中央政府いいなりの下請政治,忠実な下請けを競う自治体
・悪政への防波堤,地方自治法どおりの自治体を主張するのは共産党だけ
・共産党と無党派の革新・民主の自治体,広くは「9条の会」もこの形
4・「憲法がかがやく兵庫県政」に向けて
①『データでみる県勢2007年版』(矢野恒太郎記念会)にみる兵庫県
1)失業率が高く求人の少ない兵庫県
・169㌻ 2005年完全失業率 全国平均 兵庫県
国政調査 6.0% 6.7%
就業構造基本調査 5.4% 7.4%
労働力調査 4.4% 4.8%
・172㌻ 有効求人倍率 90 95 00 05年
全国 1.40 0.63 0.59 0.95
兵庫県 1.09 0.48 0.44 0.83
2)全国以上に経済が停滞している兵庫県
・275㌻ 県民所得(県内居住者が1年に新たに生み出した純生産物)
1人あたり県民所得 全国30位
・274㌻ 県民所得総額の平均増加率 全国平均 兵庫県
90~95年 1.5 2.5
95~00年 0.1 -0.7
00~05年 -1.2 -3.2
・280㌻ 実質経済成長率の推移 全国平均 兵庫県
95年 1.9 5.0
97年 -0.9 -3.2
99年 0.4 -0.9
01年 -1.4 -4.3
03年 1.7 1.3
3)県民の所得水準が低い兵庫県
・328~9㌻ 勤労者世帯の家計収支(05年)
実収入 全国39位
実支出 全国44位
可処分所得(実収入-租税等) 全国34位
〔月額・全国398856円 兵庫 368743円〕
・176㌻ 東京を 100とした現金給与格差 全国平均 兵庫県(05年)
事業所規模30人以上 78.4 76.3
事業所規模5人以上 77.9 75.2
4)医療・教育が貧しい兵庫県
・341㌻ 教員1人あたりの児童・生徒数 全国平均 兵庫県(06年)
小学校 17.20 18.13
中学校 14.51 15.09
高校 14.10 14.19
・348㌻ 人口10万人あたりの病床数 全国平均 兵庫県(04年)
病院 1277.8 1165.5
診療所 141.8 84.3
②政策研究にかかわる課題
1)兵庫県民の生活の分析――詳しい検討とわかりやすい特徴づけ(仕組みと変化)
2)兵庫県政の分析――わかりやすい特徴の整理とその批判,地元財界とのつながり、大企業との関わり、中央政治との関係
3)「県民が元気になれる兵庫県」に向けた積極的な経済・産業政策の提起――地元経済の足腰をどう強めていくか
4)革新自治体の政策と運動の研究――基本精神、強さの秘密、不足したもの
③どのような柱で取り組みをすすめていくか
1)「憲法県政の会」の地域組織づくり――学習をテコに
2)「憲法県政」実現にむけた具体的な政策づくり――県民に生きる希望をとどける政治
3)「憲法県政」の推進にむけた幅広い層から魅力ある人物と認められる候補者づくり
4)★「憲法県政」を自らの手でつくろうとする県民育ちの学習運動――「県民こそ主人公」の意識を喚起する「見えない建設」(政治的教養を高めあう取り組み)、県レベルでも、地域組織レベルでも多様に、無数に、全県民を巻き込んで
〔資料〕民主府政(1950~78年)を蜷川語録でふりかえる
1)『蜷川虎三回想録・洛陽に吼ゆ』(朝日新聞社、1979年)より
・「反共は戦争前夜の声である」(最初の選挙で、朝鮮戦争を前に、22ページ)
・当選してから「地方自治法をよく読んでみた」「地方自治法は憲法に基づいているってことがわかった」「今度は憲法を読み、教育基本法も読んでみた」「じゃあ,地方自治の本旨とは何か。それ結局、住民の暮らしを守ることだ。そんな結論に達しましてね、28年間、ずうっと、それをスローガンにしてきたわけです」(39~40ページ)。
・「知事がいいからじゃなしに、組合がいいからなんです。汚職ってものが、まず出ないのは」(47ページ)。
・「あたしゃ、『資本論』の信者ですから」(54ページ)。
・「あたしは、資本といってるんで、資本家といってないのがミソでしてね。資本家といってしまったら、こちら側へ来るべき資本家までが向こうへ行ってしまいますわ」(58ページ)。
・「中央とのパイプをつなぐってよくいいますけど、そんなやつは地方自治法を読んでないんですよ」「設計図は、やっぱり憲法であり、法律、条例、規則なんです。仮に中央とパイプを直結してもですよ、それで泥水を送られたのではねえ」(84ページ)。
・「共産党とあたしは同志みたいなもんです。あたしは、マルクスの研究をしてきたんだから。共産党員じゃないけど、マルクス主義者であることは間違いない」(86ページ)。
・「共産党にもてるからって、じゃあ、あたしが皇室を悪く思ってるかってぇと、あたしは悪く思わないし、皇室の方でも、あたしを悪く思わない」「第一、やっぱり、憲法はですね、『天皇は、日本国の象徴である』ってんだから。憲法を守るってえのは革新の立場でしょ」(95ページ)。
・「開発とは、住民の暮らしを維持し、これを発展させる条件をつくること、ってぇのが、あたしの定義なんです。ところが、今の開発はですね、利潤を高めるような資本の開発である。だから、そういうものには賛成できない」(103ページ)。
・「学校と家庭とが一つになって、こどもを成長させていくもの」「学校間の格差をなくすのは、やっぱり『小学区制』でなきゃいかん」「京都の教育は、憲法と教育基本法に基づいている。偏向とは何を基準にいうのか」「高校は予備校ではない。全人教育の場だ」(108~111ページ)。
・「相手側は、『イデオロギー的な行政は困る』と、よくいったもんだけれど、イデオロギーとは考え方のことなんでね。相手側は『われわれの側には、イデオロギーはない』ってんですけど、イデオロギーがないのは赤ちゃんがなんかでね、彼らにも立派なイデオロギーがあるんですよ」「それは保守反動というイデオロギーだ」(129ページ)。
・「あたしゃ、社会党が社共統一に背を向けたのを、腹にすえかねているんです」(147ページ)。
・「あたしはいつも『樽みこし』っていってきました」「あたしがそういった意味は『あたし自身に意志はない』ということなんです」「住民の意思で地方行政はやるんだ、と」(168ページ)。
・「あたしゃ、中道ってのはない、っていうんです」「真ん中を行くったら聞こえはいいけども、保守か革新しかないんです。真ん中なんてインチキですよ」(175ページ)。
・「いくら自民党が強くっても、国会で、憲法を改正する、とは、どうしてもいえないですよ」(178ページ)。
・「知事は、そこの住民に対して責任を負うんですし、いざとなりゃあ、尻まくって、住民の先頭に立って、けんかもしなきゃあならないんでね。それがなかったら、府県の損になる」(185ページ)。
・「住民は、わざわざ自分たちの暮らしのために自治体をつくり、税金出してんですから、それとぜんぜん関係ない資本家のために熱をあげるこたぁないだろう」(190ページ)。
・「日本みたいに、ちゃんちゃんばらばらやったり、中国のように、日本人に殺されたり、そういうところに残された老人対策ってのは、戦争の後始末の対策なんですね」「これからの老人対策ってのは、むしろ、それをひっくら返して、青年対策にすべきなんで、働ければ食えるって社会でですね、働けるだけの腕をつくらせ、頭をつくらせるってことが肝要なんでね」(218~9ページ)。
※宮本憲一「問題は、革新自治体の継続がなぜできなかったのか、という点にある。原因のひとつは、長く続きすぎたことだが、もうひとつは、蜷川さんは非常に個性が強くて、政府の政策が蜷川さんのところは全部カーブして、それていく。最近出てきているように、住民運動がほうはいとして起こって府政の要求を変える、というのではなく、住民に届くときには、蜷川さんの手元でカーブさせられちゃっている。そのために、住民運動が起こらない。あまり伸びない。だから、革新自治体が続かなかったんじゃないか」(261ページ)。
2)刊行委員会編『虎三の言いたい放題』(1981年)より
・「住民のしあわせのために、住民の暮らしを守る政治を住民自身がやらなければならない。それが『革新』の一つの努力目標である」(29ページ)。
・「成長率をとやかくいっても国民は食えない」(38ページ)。
・「何よりも大切なことは、それこそ『革新の大義』に徹して闘うことである。『イデオロギー抜き』なんてことは人間が人間として政治をやる限り、あったものではない」(41ページ)。
・「学校は沢山ある。学生が自分の好きな大学に入ればいいのだ。大学は『自ら学ぶところ』で、学生が学ぶことに熱意があり、教師が親切に相手になってやれば、それでいいのだ。『大学』は看板ではない」(44ページ)。
・「もう一つデマ退治で大切なことは」「こちらも常々住民の中に入って、暮らしと経営を守る地方自治の真意を伝え、理解してもらわなければならない。この『理解』こそがデマ防止の最高の手段であろう」(53ページ)。
・「地方自治体は、憲法がその根本を規定し、また地方自治法がその組織および運営を定めている通り、地域住民が、自分たちの暮らしを守るために、自分たちで組織している団体である。だから……いわゆる地方公共団体は、地域住民の暮らしを守る組織として地域住民のものである。決して政府や政党のものではない。ここに地方自治のいわれがある」(60ページ)。
・「自治体の主人公は住民であり、主人公の期待するところは、その暮らしを守ることであって、資本を擁護することではない」(62ページ)。
・「困難を打開する道は、庶民の団結、腕を組むこと以外にはない」(128ページ)。
・「“革新”といえば、何か政治家や政党の問題のように考える人もあるが、これこそ庶民のたゆまず歩く道である」(139ページ)。
・「いくら日本が戦争を放棄しても、敵が、どこから、どのように“現われてくる”かはわからない。そこで問題は、敵が現われないようにすることである。ここに長く論じている余裕はないが、そのためには、要するに、国際的には“外交”、国内的には国民の暮らしの土台をしっかりすることと、国民の暮らしを安定した豊かなものにすることである」(172ページ)。
・「油断してはならぬ。わかっていると思うものが存外わかっていないのである。われわれは“学習”に力を入れ団結と統一の実践により、庶民の暮らしを守らねばならない」(191ぺージ)。
・「残念なのは、地方自治体に“調査”や“研究”の意欲のないことである。知事が東京へ行くばかりが能ではない。三割自治でも“研究”はできる。中央で行政改革をやるというが人を減らすばかりが改革ではない。地方も協力して“研究”に一つの活路を見出すべきであろう。これが住民のためだ」(248ページ)。
・「大学とは学問をするところで、“自ら学ぶ意思”のないものは看板につられて大学に行っても意味はない」(260ページ)。
3)『樽みこし 蜷川虎三対談集』(駸々堂、1972年)
・「住民もそうだし、われわれもその気でやらねばならない。だから、憲法が、日本の民主化の理想は地方自治にある、という考えをもっているのはそこだと思います。基本的人権だなんていったって、自治体が自分たちでしっかりやっていかない限り、どうにもならない」(104ページ)。
・「それで私どもは、憲法が公布された昭和21年11月3日と、施行された昭和22年5月3日を記念して、毎年11月3日と5月3日を中心にして、『憲法を暮らしの中に生かそう』という運動をしているのです。戦争放棄、主権在民、民主主義といったことを徹底していこうとやっているんです」(103ページ)。
・「われわれも『憲法を暮らしの中に生かそう』というたれ幕までさげていますが、なかなか徹底しませんね……。日常生活で、子供さんのことを思えば憲法と繋がるというところまで考えていかなきゃならないと思います」(110ページ)。
・「私どもは猿芝居の猿みたいなものですから、後ろでデデンとやると猿は踊るし、デデンとやらなかったら日なたぼっこしてシラミを取っている。だいたいこれが知事なんぞの性質ですわ。これは本質ですね」(155ページ)。
・「私どもは地下鉄も作りますけど電車も残します。電車は速力がのろいだのなんだのといいますけど、それで暮らせるような京都が大事だと思います」(160ページ)。
・「労働の条件を良くする、例えば環境を良くするとか、空気を良くするとか、食堂をきれいにするとか、休ませるとかいうことをやるべきですね。日本じゃ余暇ていうけれど、働く時間、寝る時間、食う時間ていうものをさいた残りの時間が余暇ですね。ところが余暇の使い途がない、大衆に娯楽がない。だから競馬へ行ったり、パチンコへ行ったりね。もっと余暇を言う前に、大衆に娯楽を与える、人生を培えるようなね。賭事だって別に培えないことはないけれど、あれは悪くいくとね」(167ページ)。
・「私の知事としての気持はそれだけです。もっと人間らしい暮らしをね」(168ページ)。
・「『住民の中で、住民とともに、住民の暮らしを守る』知事だというんです。ですから、私は公僕とは言わないんです。住民の下にいるんじゃないんです。一緒にいるんです」「自治体というのものはそういうものなんです」(197ページ)。
・(目に見えない建設について)「文化的なものですね。文化的な建設、意識の向上とか……」「人間の精神文明を高めていく」「私は下手な橋をかけるよりも、寄席でも作った方がいいと思います」(198~99ページ)。
・「今のように、ただ目先の川をなおすとか、道路を直すとかばかりでなく見えない建設を指導者はやるべきだと思います。そして、みんながその気になった時に、見える建設はいつでもできるということが一つですね。もう一つは、今情報時代だといいながら、嘘の情報が多すぎるんです。ですからほんとのことを知らせ、そして住民の意識を高める。これから地方自治が育つか育たないかというのは住民の意識だけだと思うんです」(213~4ページ)。
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