以下は、兵庫学習協の「夏期集中講座」第2講に配布したものです。
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兵庫学習協・07夏期集中講座
講師のつぶやき(1)
2007年5月27日
神戸女学院大学・石川康宏
(1)
今日(5月27日)は天気がいいようです。そろそろ梅雨も近いのでしょうか。さて、前回の人口問題のテーマについての質問・感想からはじめましょう。
質問
○先生の講義を聞いていると、なぜか未来に展望が開けてきます。一方、世間のニュースや自分の周りの人達の中では平和の問題、生活(福祉)の問題で一寸先は闇でしかありませ。この違いは何から生まれるのでしょうか? 私かて中南米の運動の発展とかをニュースで見て、勇気付けられる部分も多少はあるのですが‥‥。
――現状は確かに大変で、政府が向かっている方向も大変ですね。ですが、結局、政治は権力がすべてを決めるのではなく、権力者と国民の闘いによって方向が定まるものであるわけです。一例として、平和の危機がある反面、国民の世論調査は、①9条「改正」反対、②安倍内閣下での「改正」反対、③一般論として改憲には賛成、しかしその比率は下がっているというのが現実です。そこには国民の闘いの成果があらわれているとはいえないでしょうか。政治の変化は大局的な流れの中でとらえることが大切ではないかと思います。
○1950~70年代の専業主婦の増大は女性一般の人生観を今日なお大きな影響力を与えていると思うが、保育所運動が活発化した70年代はどういう構造変化があったのでしょうか?
――戦後女性の社会的地位の変化については、『前衛』07年3月の「長時間労働・女性差別とマルクスのジェンダー分析」に紹介しておきました。農林漁業者が急減として、労働者が急増するというのが戦後社会の階級・階層構成変化の大きな特徴です。その中で女性たちも都市へ移動し、どんどん労働者になっているのです。ところがそれを上回る専業主婦が誕生する。したがって、75年の専業主婦比率のピークに向けた歴史の変化の中で、実数としては労働者女性は増えています。それが「ポストの数ほど保育所を」という運動の土台になっていったわけです。
○ヨーロッパでは夫婦で1.5倍の賃金を得るという考え方があるが、――これは間違っているか。日本では男性がなかなか労働時間短縮に向っていないように思う。家に早く帰らない男性。これではなかなか男女で1.5の収入をうけいれる社会ではない。早く家に帰って子育てという男性が増えればよいけれど。
――オランダなどの事例ですね。簡単にいうと、これまでは男1・女0で家族で1の賃金だったが、これからは男も女も短時間労働にして、男0.75・女0.75で家族で1.5の賃金にしようという取り組みですね。これによって、男性の賃金は下がるが、家族全体の賃金はあがるし、男性の労働時間は短縮し、働きたい女性は働くことができるようになるというものです。オランダでは政労使3者の合意で、この方向に社会が大きく動きました。そして、現在のオランダ労働者の年間労働時間は1300時間台で、日本との差は900時間以上となっています。「オランダ・モデル」などといわれています。単身者の生活、短時間雇用の労働と生活の安定、社会全体に必要な労働時間とのバランスなど、検討課題はあるようですが、一足飛びに同じものにはならなくても、労働時間短縮と男女のジェンダーギャップ縮小を同時に追求するものとして、これに日本社会が接近することの意味は大きいと思います。なお日本で労働時間短縮がうまく進まないことの背景については、先の論文「長時間労働・男女差別とマルクスのジェンダー分析」にも書いた戦後財界の一貫した長時間労働維持政策と、これと有効に闘うことができずにきた労働運動の弱点があると思います。
感想
○豊かになれば少子化が進む法則の解明が興味深かったです。沖縄は失業率が高いのに少子化社会ではない理由がよく分かった。
――大局的には資本主義の成立期に人口爆発(第一の人口転換)が起こり、資本主義の成熟に応じて第二の人口転換が起こっています。その背後に法則性をもとめる探究は人間社会の研究として重要な課題であると思います。他方で、人間の生活や考え方は経済状態に制約されるところが多いとはいえ、宗教や伝統や家族のあり方など、経済以外の多くの独自の要因にも左右されているのが現実です。私の前回のお話は、その多様な要因にまでは、まだ目が届いていないものとして理解していただけると良いかと思います。
○何の基礎知識もないまま来てしまった人間には難しいお話でした‥‥。今後も積極的な学びが不可欠であると痛感しました。有難うございました。
――日頃、労働運動や市民運動の場で良く学ばれている方にとっても、決してやさしい話ではなかったと思います。少子化はなじみのある話ですが、その背後にどのような社会の仕組みの変化があるかという話は、誰にもめったに考える機会がない問題ですから。過去の学問の成果を繰り返すだけでなく、実際に生まれてくる新しい現実に挑戦する姿勢が、学びにはいつでも必要なのだと思います。今後は本屋さんで、人口論などにも目を向けるようにしてみてください。
○2大政党論がむしろ共産党の支持率増大に生きてきたという指摘に驚いた。70年代より支持率がよくなっているのになぜ共産党が小さくなっていると感じるのはなぜか。
――選挙制度の仕組みとしては、小選挙区制によって「支持」が「議席」に結びつきづらくなっているという問題があります。共産党の支持率の変化など、具体的な問題は第4講でとりあげましょう。
○人口増加の波が社会文明システムの歴史段階と関係しているという話は面白かった。
――これは、この論文を書くにあたっての学習の中で、私自身にとっても最も面白く感じられたところの一つでした。人口変動の研究をつうじて、人口変化が「超歴史的」ではなく「歴史的段階的」であることがいわば常識化してきているわけですね。他方で、その具体的な歴史段階分析がマルクスの生産様式論がどういう関係にあるかは、つめて考えてみたいところです。
○ものごころついて初めての学習でした。マルクスはなんでも書いているなぁと思いました。良きにつけ悪しきにつけ、運命的見方はあかんと思いました。正しいから勝つと思ってだらけた活動をしたらあかんとか、ある種今のマスコミがやる勝敗予想的見方もあかんと思いました。
――当然、時代の制約があるわけですが、とはいえマルクスは確かに多才ですね。社会の様々な現象を良くしっていますし、それをバラバラに知っているのでなく、単一の社会の多様な現象として統一的に理解しようとする深い思索が継続されています。この深みに接するためには、解説書ではダメですね。言い古されたことですが、解説書はしょせん解説者が理解できた範囲でのマルクスでしかありません。入門書・解説書にも役割はあるわけですが、それを読む際には「きっとこの本には尽くされていない研究の豊かさがマルクスにはあるんだろうな」と、そう思っておくことが大切です。ぜひ現代社会その具体的な問題に挑戦しながら、あわせてマルクスその人の豊かさにもふれてみてください。
○人口予測の前提条件は、このままの状態が続いたらというのが予測の条件であり、現実に階級闘争が行なわれており、常に情況は変化し、下らない予測に惑わされることのない様に。
――そのとおりですね。地球環境の変化も、平和の危機も、「格差社会」の進行も、いずれも実際には社会改革の努力によって変化をつくることができる問題です。少子化問題も同様です。では、何のためにその研究が必要になるのか。それは社会改革の努力がどこに向かって行われるべきかを明らかにするためです。現状の解釈ではなく、そこを乗り越えて、現状の改革にいたる合理的な問題解決策を探究するために学問は力を発揮しなければならないわけです。人口論・少子化問題の研究も同様でしょうね。
(2)
前回のテーマに関連するいくつかの情報を、順不動で以下に紹介しておきます。みなさんの関心の枠の中に入れて見てください。いずれも、私のブログにすでに紹介してあるものです。
下の1.39という数字の根拠は何なのだろう? そして現在の少子化の大きな原因のひとつは「生活の大変さ」だが,庶民増税で少子化対策? ようするに「とりあえず増税したい」というだけか。
出生率 2050年に1.39 政府目標(産経新聞、06年5月15日)
川崎二郎厚生労働相は十四日、千葉市内で行われた少子化対策のタウンミーティングで、平成六十二年(二〇五〇年)の出生率を一・三九に回復させることを政府目標とする考えを明らかにした。一人の女性が生涯に出産する子供の人数を示す合計特殊出生率は、平成十五、十六年に戦後最低の一・二九を記録。来月にも発表される十七年の数値はさらに低下するとの見方が強まっており、現実的な目標を掲げることで少子化対策を具体化させる狙いがあるとみられる。
川崎氏は、日本の将来人口と出生率について、「政府が目標値を明確に示す時期だ」とした上で、平成六十二年に人口一億人、出生率一・三九にすることが適切との考えを示した。
人口減少に歯止めをかけるには合計特殊出生率で二・一程度への回復が必要とされる。目標値を一・三九に定めることについて、川崎氏は「これから少子化対策の政策を重ねても、人口が減らない二・〇までは戻せない」と指摘。「このぐらい(一・三九)あれば年金などのシステムは回していける」と、将来の財源不足が指摘される社会保障制度への深刻な影響は避けられるとの見通しを示した。
川崎氏が現実的な目標値を示したのは、政府・与党による歳出削減の議論で社会保障費のさらなるカットが求められる一方で、少子化対策として児童手当の拡充や乳幼児手当、育児保険など新たな財源を必要とする施策が検討されているためだ。
川崎氏はこの日のタウンミーティングで消費税率について「再来年には引き上げざるを得ない」と明言するとともに、「今のまま児童手当拡充など高福祉を望むことは無理」とも指摘した。将来的な人口のイメージを示すことで、少子化対策議論に共通認識を持たせ、現実的な検討に落ち着かせたいとの思惑もあるようだ。
「『育児や介護に参加できる働き方必要』厚労白書」(06年9月8日、日経新聞)。
「川崎二郎厚生労働相は8日の閣議に2006年版厚生労働白書を報告した。今年の表題は『持続可能な社会保障制度と支え合いの循環』。人口減少時代を迎え、予想を超える速さで少子化が進んでいる現実を踏まえ、社会保障や雇用制度のあり方を検証する内容になっている」。
「昨年の合計特殊出生率(速報)は、国の予想を0.06ポイント下回る1.25だった。白書は『急速な人口減少は、国や社会の存立基盤にかかわる問題』と指摘。国民の間にも不安が生じているとして、少子高齢化が進んでも機能する社会の安全網(セーフティーネット)を整える必要があるとしている」。
「具体的には、個人の負担が増す育児や介護などを家族や地域社会が支援できる体制が必要と分析。こうした活動により多くの人が参加できるように、長時間労働を是正するなど企業や労働者が働き方を見直す必要があると指摘している」。
しかし,ここでなぜ長時間労働の是正を推進する主体に「政府」が入って来ないのだろう?
企業まかせで労働時間の短縮など起こるわけがないではないか。これもまた「企業はなんでも自由」という「構造改革」大前提のジレンマなのか。
『経済財政白書』も,非正規の正規への転換をいいながら「構造改革」推進を主張していた。まったく同じ矛盾の表明が,今回の『少子化白書』にもある。
少子化克服のために『白書』が提起する改善を実施するには,「構造改革」が推進する,①労働改革,②社会保障改革を根本から方向転換せねばならない。
これは,「構造改革」が健全な経済・社会の発展にまるで反していることの政府内部からの告発である。
「世界で最も少子高齢化進行する国」18年版少子化白書(産経新聞,12月1日)
「政府は1日午前の閣議で、平成18年版「少子化社会白書」を決定した。白書は、人口構造の国際比較を踏まえ、わが国について「世界で最も少子・高齢化が進行している国」と分析。17年に出生数が初めて死亡数を下回ったことなどを根拠に「人口減少は加速度的に進行する」と警鐘を鳴らしている。
白書は、(1)17年の出生数は前年比約4万8000人減の106万2530人で、初めて110万人台を割り込んだ(2)同年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の平均数)が1.25と過去最低を更新し、欧米諸国に比べても低い-ことなどから、昨年同様、現在の日本を「超少子化国」と位置付けた。
年金や健康保険など国の社会保障給付費に占める児童・家族関係給付費の割合が、諸外国よりも小さい点も指摘した。
また、政府が目標とする「出生率の低下傾向の反転」に向けて、「まだ20、30代の人口層が厚い時期にインパクトのある対策を速やかに実施する必要がある」と分析している。これに伴う具体的な施策としては、乳幼児への児童手当制度の拡充や子育て支援税制の検討などを挙げた。」
過去30年で最高とはすごい。 戦後の急速な「労働力の女性化」を追いかけて,家庭と労働を両立させる社会の条件整備がすすんできたということだ。見習えよ日本よ。 いまさら「女は家庭」なんていって場合じゃない。
フランス出生率2・0に上昇 06年、育児休など結実(東京新聞,07年1月16日)
「【パリ17日共同】フランス国立統計経済研究所(INSEE)は16日、2006年のフランスの合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子供数の推定値)が前年の1・92から2・0に上昇、過去30年間で最も高かったと発表した。
フランス政府は育児中の休暇や休業補償を手厚くすることで子供を育てながら仕事を継続できる社会の実現を目指しており、政策努力が実を結んだ形だ。
出産年齢は上がっており、06年に出産した女性の52・8%が30歳以上だった。同年の欧州連合(EU)各国の出生率は出そろっていないが、INSEEは「恐らくフランスが最も高いだろう」としている。
一方、日本の厚生労働省によると、06年の日本の合計特殊出生率は1・29前後の見通し。」
アジア・マンスリー(2007年05月号)に、大泉啓一郎氏の「東アジアの人口変化と持続的経済発展」が掲載されている。
一部を抜いておく。東アジアの「人口転換」は、この20~30年ほどで急速に収束するということのようである。全文はサイトで確認を。
http://www.jri.co.jp/asia/2007/05asia.html
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2007年3月に発表された国連人口推計によれば、2025~35年に東アジアは人口減少に転じる見込みである。東アジアの持続的な経済発展を展望する上で、急速な人口変化に配慮する必要性が高まっている。
■2025~35年に東アジアは人口減少地域へ
2007年3月、国連は「2006年度版世界人口推計(1950~2050年)」を発表した。これによれば、世界人口は2005年の65億1,500万人から2025年に80億1,100万人、2050年には91億人9,100万人に達する。この間に世界人口は約27億人増加することになるが、東アジアの人口は2005年の18億4,100万人から2035年に20億6,300万人へ増加した後、減少に転じ、2050年には20億1,100万人となる。その結果、東アジアの世界人口に占める割合は2005年の29.2%から2050年には23.0%へ低下する。
なるほど、そしてこの人口比率の変化が、アメリカの出生率の相対的な高さにつながっているわけだ。
米のマイノリティー1億人突破・総人口の3分の1に(日経新聞、06年5月19日)
米国でヒスパニック系やアフリカ系(黒人)、アジア系などのマイノリティー(少数派)人口が昨年7月時点で1億人を突破し、総人口の3分の1に達したことが分かった。米国勢調査局が17日、発表した。
少数派グループのうち、最も増加ペースが速いのは中南米からの移民を中心とするヒスパニック系で、前年比3.4%増え総人口の14.8%を占めた。アフリカ系は同1.3%増え13.4%、アジア系も同3.2%増の5.0%となった。
一方、建国以来の「多数派」である非ヒスパニック系の白人は0.3%増にとどまった。いまだに総人口の66.4%を占めるが、現在の傾向が続けば今世紀半ばにも「少数派」になるとの見方もある。
社会と国民の政治的成熟度の相違といってしまえば、それまでだが。それにしても、日本との政治の姿勢の相違は大きい。
保育所3倍化 75万カ所 ドイツで少子化対策 13年までに 連立与党が合意(しんぶん赤旗、07年5月20日)
ドイツ連立与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)は十五日、三歳児までを対象にした保育所を二〇一三年までに七十五万カ所へと三倍に増設し、入所者数も現在の三倍に増やすことで合意しました。
前日からの五時間にわたる両党の交渉の結果まとまったもので、対象乳幼児の35%の入所が保障されることになります。
保育所増設は、フォンデアライエン家庭相(キリスト教民主同盟=CDU)がことし三月に提唱、連立与党内で予算措置についての折衝が行われていました。合意を受けて、〇九年までに法案化される予定です。保育所増設に要する百二十億ユーロ(約一兆九千六百億円)の財源は連邦政府、州政府、市町村が分担します。
ドイツでは、〇四年の合計特殊出生率(一人の女性が一生のうちに産む子どもの平均数)が1・36となり、欧州連合(EU)加盟二十七カ国平均の1・51(〇五年)を下回りました。このため、将来の人口減少が懸念され、出生率の引き上げが焦眉(しょうび)の課題となっています。
保育所増設計画は、今年一月に施行された「親手当」に続く少子化対策。「親手当」は、出産後、両親のどちらかが育児休暇を取得すれば、休暇前の収入の67%を最長十四カ月保障するというもの。父親の育児参加を促す目的もあります。
連立与党間の交渉ではこのほか、労働組合などが要求している時間給七・五ユーロ(約千二百三十円)の全国一律最低賃金制を導入することも協議されましたが、CDU・CSU側の反対で合意されませんでした。
(3)
以下、第2講の内容を補足するレジュメです。
①日米首脳会談(4月27日)で語られたこと
※1泊2日逃げるように、参勤交代の時代でないとはいったものの
・「かけがえのない日米同盟」――イラク戦争への理解・支援、アメリカ大統領選挙
・「戦後レジームからの脱却」――侵略への反省から戦争しない国へ、これを放棄
・解釈改憲の約束――集団的自衛権(アメリカへの攻撃に反撃)の有識者会議を報告、明文改憲の前にも米軍の軍事支援を
・「構造改革」推進――「日本人は米国産牛肉を食べた方がいい」(ブッシュ大統領)
・「慰安婦」問題――「河野談話」からの後退を許さない、なぜいまアメリカがこれを問題にするのか、日米関係と改憲の内容にもかかわる大きな問題
②「河野談話」見直しへの動き
・この間の動き――アメリカ下院「慰安婦」決議案、3月1日・5日の安倍発言(狭義の強制性、決議に謝罪しない)、「河野談話」見直しの動き、アメリカの怒り、3月9日「反省とお詫び」、日米首脳会談
・91年金学順提訴,92年吉見資料、「加藤談話」、93年「河野談話」、95年「村山談話」(侵略と植民地支配への反省)
※「加藤談話」が防衛庁70件、外務省52件、文部省1件、厚生省4件の資料で明らかにしたこと。以下に「政府の関与があった」。「慰安所」の設置、「慰安婦」募集者の人選、「慰安」施設の築造・増強、「慰安所」の経営・監督、「慰安所・慰安婦」の衛生管理、「慰安所」関係者への身分証明書の発給、その他。
※「河野談話」がさらに多くの資料検討から導いた謝罪。「本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」。
・自民党歴史・検討委員会95年『大東亜戦争の総括』(大東亜戦争は侵略でない、南京大虐殺や「慰安婦」はでっちあげ、侵略・加害を記した教科書との闘いが必要、国民の歴史認識をかえるための学者を使った国民運動が必要)、96年自由主義史観研究会キャンペーン、97年「つくる会」「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」発足、教科書問題、NHK番組改竄、靖国参拝,「新憲法草案」……
・06年安倍改憲内閣18名、日本会議国会議員懇談会(11名)、神道政治連盟国会議員懇談会(13名),みんなで靖国神社に参拝する会(12名)、憲法調査推進議員連盟(11名),日本の前途と歴史教育を考える議員の会(7名)、安倍氏はすべてに
※民主党3月9日「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」(会長・渡辺周衆院議員、20名)、公明党北側幹事長「客観的、科学的にという前提で、(政府の再調査を)否定するつもりはない」(3月7日)
③封じられた帝国軍隊名誉回復の試み――背後にある世界構造の変化
・06年から強くなった靖国史観へのアメリカの警戒(ブッシュ大統領の靖国・「慰安婦」対応)、東アジア政策にとって(変化する世界構造)、日米同盟の将来にとって
※ケント・カルダー(元駐日大使特別補佐官)「『米国一辺倒』だけでは米国も困ってしまう」(『週刊・東洋経済』06年7月1日)
「もっと広く、アジアに対して日本の影響力を及ぼしていくために、日本がどう行動するのかを明確にしなければ」「何より、米国から見て、アジアにおける日本のリーダーシップは重要であり、それが道義性の喪失によって損なわれるようなことになれば、日米両国、日米同盟にとってもマイナスになる、と思います。米国も困ります」
・「慰安婦」決議案阻止への日本政府のロビイング(共和党ロバート・マイケルから民主党トーマス・フォーリーへ)、加藤駐米大使、世耕補佐官、「議員の会」訪米計画の頓挫
※世耕弘成・広報担当首相補佐官、2月19日~22日訪米
・「決議案の裏には中国ロビイストがいる。狙いは日米の離反」「世耕の勢いに押されて職員が呼びに行った」「国務次官補のヒル」氏にも(産経3月22日)。
・日米同盟重視と靖国史観の牽制(アメリカ)
※アメリカ議会調査局報告書「日本軍慰安婦システム」を作成したラリー・ニクシー氏へのインタビュー(東亜日報4月24日)
――「米議会の同問題への関心は、人権という普遍的価値のためか」
「……日本国内の歴史修正の動きは、長期的に日米同盟にも悪影響を及ぼす恐れがある。もし彼らが日本での影響力が大きくなり、日本人が自分たちは戦争当時起こったことに責任がないと考えるなら、戦争責任はだれが負うことになるのか。米国が有罪になると修正論者たちは主張する。そのような態度は、日米同盟にとっても危険なものとなりうる」
※ネグロポンテ国務次官補の米下院外交委員会での発言。「中国と日本ほど重要な関係はない。我々は安倍晋三首相が日中の外交関係改善を優先事項としたことに励まされた」(日経5月2日)。
・「親米(従米)・保守」の矛盾、「親米」上位での解決への動きと一定の反動・動揺、改憲案にどこまで靖国史観を盛り込むか、論壇の「自立保守」(関岡・小林・西部氏等、ただちに日米同盟破棄の議論はない)
・安倍首相の謝罪――いったい誰に謝っているのか
※「社説・頭がおかしい安倍首相、話にならないブッシュ大統領」(朝鮮日報4月30日)――被害者不在のやりとり
※安倍首相「米国に謝罪したことは全くない」(日経5月1日)
④輝く日本国憲法の原点
・侵略への反省を大前提とした国づくりをめざす日本国憲法
・アメリカの企みと思惑をこえて
・紛争を話し合いで解決する世界へ――戦争放棄は国連憲章の精神をこえて、大国による軍事支配の時代の終わり、各国が主人公、連帯と平和をめざす世界の流れ
・侵略戦争への反省――アジアと世界に友人のある国へ、世界の流れを促進する日本へ
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