3つめの話し合いはジェンダーネタ。
1)「ジェンダー」という用語は,論者によって理解が様々である。国連が男女平等の推進に活用している一面もあれば,独自の議論とむすんだ強引な論者の使用もあり,また国内では「構造改革」推進に利用される場合もある。この用語の使用が,用語にまつわるすべての議論の肯定と誤解されない工夫がいつもいる。
2)「ジェンダー・フリー」となるとさらに中身が曖昧になる。95年前後の女性財団によるパンフでの使用が最初らしいが,多くの論者がいうように,これでは「ジェンダーがなくなる」ことになる。用語としては簡単に「男女平等の推進」で良いのではないか。著名なフェミニストにも,最近はそういう主張が見られている。
3)『ジェンダーと史的唯物論』については,根本の姿勢には共鳴できるところがある。しかし,内容については,特に後半部分がむずかしい。また個々の章のかみあわせ,全体の体系がどうなっているかが見えないという問題もある。個々の章にはおもしろみがあっても,その提示されるものの全体像がわからない。また全体の中で第4章が「別の世界」に見えてくる。理論的なものとの結びつきがさだかでないから。
4)フェミニズムの批判的検討が主題となるが,それがこの本の長所でもあり短所でもある。特にタイトルから「マルクス主義の男女平等論」を期待して読む人には,紹介されたフェミニズムの理解と,その批判的検討の理解が二つ重ねられねばならず,非常に理解がむずかしい。「基礎から誰にもわかるもの」が,別に必要とされるだろう。
5)以上,特に今後の課題にかかわって,こちらが受け止め得た限りでのいくつかである。
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