政府税調の07年度税制改正答申である。
①企業には減税,②個人には増税,③これは不公平ではないか,④個人消費を抑制しては景気は良くならない,⑤さらに選挙を考慮した消費税増税隠しがあるのではないかと。
いずれもまったくもっともな指摘。
権力の動向をチェックする,本来のジャーナリズムの姿勢にふさわしい中味の「社説」である。
社説=政府税調答申 企業減税に潜む危うさ(信濃毎日新聞,12月3日)
「予想どおり、企業向けの減税メニューが並ぶ中身となった。政府税制調査会が、安倍首相に手渡した二〇〇七年度の税制改正の答申である。
来年から所得・住民税の定率減税が全廃される。個人は増税の一方で、企業減税ばかりを先行させた印象はぬぐい切れない。
目玉は減価償却制度の拡充だ。機械設備などの資産については、企業は耐用年数にわたって、必要経費として分割して計上できる。これが減価償却の仕組みである。
いまの制度では、必要経費の累計は95%までしか認められない。答申は限度額を撤廃する。
さらに液晶プラズマ、半導体など先端機器の生産設備は、法定の耐用年数を短縮し、前倒しで償却できるようにする。いずれも企業の設備投資を活発にし、競争力を高める狙いがある。
減価償却制度の見直しは、自民党の税制調査会も同様の方向だ。来年度の改正で実現する可能性が高い。
このほか、同族会社の内部留保金への課税を見直し、資金調達が困難な企業が資本蓄積をしやすくする。ベンチャー企業への投資を優遇するエンゼル税制も使いやすくするなども盛り込んだ。
答申を貫く考え方は、減税によって企業活動を支援し、景気を引っ張ろうというものだ。増税路線を打ち出していた小泉政権下の政府税調から、企業を中心とする減税路線に転換した、とみることができる。
法人税の実効税率の引き下げについては、「検討課題の一つとして、問題提起された」と書き込み、政府税調内に特別部会を設け、年明けから調査・研究を始める。本間正明会長が引き下げ論者だけに、引き下げ論議が活発になりそうだ。
政府税調の方針には、二つ疑問がある。一つは、個人の負担増だ。定率減税の廃止で、例えば、年収七百万円の夫婦・子ども二人の家庭で約四万一千円の増税になる。参院選以降は消費税率の引き上げ論議も避けられない。個人は増税というのに、企業は減税では、公平さを欠く。
もう一つは、企業減税を推し進めても、期待できるような景気拡大を維持できるか、不透明なことだ。
長期の景気拡大にもかかわらず、賃金は伸びていない。非正社員が増え、所得格差が広がっている。個人消費が落ち込み、景気失速の懸念すらある。これでは企業減税をしても国民の利益になるか、疑わしい。
政府税調が消費税率引き上げに触れていない点もふに落ちない。参院選に向け、税制の在り方を重要な争点にしていく必要がある。」
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