以下は,9月2日に行われる和歌山学習協の講座「ジェンダーと史的唯物論」第4回に配布する「講師のつぶやき」です。
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〔2006年夏「ジェンダーと史的唯物論」講座〕
講師のつぶやき(4)
2006年8月29日
神戸女学院大学・石川康宏
http://walumono.typepad.jp/
はやいもので,この講座も今日が最後です。初回が7月15日でしたから,1ケ月半ほどの講座でした。かなり大量の情報を凝縮した形で紹介していますので,ぜひ,これをみなさんの独習につなげてください。
これをきっかけにみなさんで学習会をつくってみるのも良い方法かと思います。神戸では半年前に,ジェンダー講座がきっかけで学習会が発足していました。
さて,この「つぶやき」を書いている時点では,まだ自民党の総裁は決まっていません。しかし,安倍晋三氏がかなり有利のようですね。
仕方なくというべきか,仕事(活動)に必要だからというべきか,ともかく安倍氏の本を2冊ほど読んでみました。上の私のブログにすでに紹介したものですが,以下,その感想を再録しておきます。ご参考までに。
〔8月26日〕安倍晋三『美しい国へ』(文春新書,2006年),『安倍晋三対論集』(PHP研究所,2006年)を読み終える。
いくつも感想はあるのだが,ごく基本的なところだけ。
第一にそもそも中身がおそろしく軽い本である。
『美しい国へ』についてはご本人も「政策提言のための本ではない」と語っている。しかし,それにしても,政治家の語りには,世界と日本をどう見るか,どこに社会改革の課題をどう見出し,それをどのように解決していくのかという政治家としての大きな「哲学」がにじみ出るものである。それがただのひとつも感じられない。
それにもかかわらず,この人が自民党総裁の最有力候補だという現実があるのだから,そこには自民党自体の政治運営・政策立案能力の貧しさが集中的にあらわれているというしかない。そもそもこの政党には,自らの足で立つという自覚と気概がない。「財界・アメリカいいなり」政治が生んだ退廃の末路といえようか。
第二に政治を論じながら国民生活の苦難をひとつも論じないという,その政治家としての目線が異常である。そもそも経済政策についてはこれまでほとんど語ったことがないようだが,少なくとも今年の正月以降,「格差社会」の深刻化は政府・自民党にとっても隠しようのない重大問題であったはず。
今年の『経済財政白書』も『労働経済白書』も,特に若者の生活の深刻さについては何をどうしても目をそらすことができなくなっている。それにもかかわらず,安倍氏の議論には,これにどう立ち向かうかという話はどこにもあらわれない。
ことは雇用や若者の生活だけではない。再チャレンジのためのセーフティネットといった言葉はあるが,その実態は,生活保護が受けられずに餓死した人の話を自ら話題にあげながら,それを生活保護を適用するかしないかの判断の難しさの例証とするといった程度のものでしかない。餓死するほどの苦難と貧困に,ただちに手を差し向ける意志をもたない政治が語るセーフティネットとは一体なんなのか。
もっとも,それは国民の生存権を「基本的な権利・自由」ではないとする改憲案(2004年11月)をもつ政党の党首にはふさわしいのかも知れないが。
第三に世界構造の中での日本の地位の認識だが,外交は対米従属が大前提であり,それ以外の世界についてはほとんど視野に入っていない。しかも,そこにいう外交の内容はほぼ軍事的対応に限られている。
在日米軍基地の増強,「改革要望書」によるアメリカいいなりの「構造改革」,憲法「改正」の要求,増え続ける日米共同演習など,日米関係にはその是非を根本から考えるべき問題がいくらでもあるはずである。それにもかかわらず,そもそも日米関係の現状は点検の対象にすらなっていない。つまり,すべては,これでよしということである。
驚くべきことだが,この本にはブッシュ大統領,小泉首相とともに,アメリカでCIAによるブリーフィングを受けたことが自慢話のように描かれている。それが一国の政府代表のとるべき態度だろうか。それはアメリカによって,日本がアメリカの属国あるいはアメリカ国内の一つの州と同列のものと扱われたということではないか。そのことの重大さに気付かないほどに,この人のアメリカ崇拝(従属)は深刻である。
対照的に国連に対する評価は驚くほど低く,国連はいわれるほど美しくない,国連崇拝はしないといった言葉が繰り返される。だが,ではアメリカはそれほど美しいのだろうか,またアメリカはどのような理由によって崇拝の対象となっているのだろう。
中国敵視の姿勢については,東アジアとの関係もインド,オーストラリア,アメリカと組めばなんとかなるという放言につらなっていく。これについては,加藤紘一氏による「幼稚」だとのお叱りのみで十分だろう。
第四に新憲法制定(改憲)を,あたかも日本の「独立」の達成に必要なことかのように戦後史をいつわる格別の努力に驚かされる。憲法前文にある戦争反省を連合国への「詫び証文」と罵倒し,そのような押しつけ憲法を捨てて,新憲法を制定することが「占領体制」脱却への道だとされる。
この2冊では慎重に言葉を避けているが,この人の歴史認識には,かつての戦争を侵略戦争だとする理解はないようである。「詫び証文」を消し去るというのは,かつての戦争を侵略戦争とは認めない国づくりをするということである。
また安倍氏は,自民党の結党や60年の安保改定を日本の「独立」への努力と描いているが,ではなぜその結党に当のアメリカが資金援助を行ったのか。また安保改定が旧安保の基地提供にとどまらず,経済協力や軍備増強をアメリカに約束し,さらに日米共同作戦という名の自衛隊の米軍による下請あるいは組み入れという具合に,アメリカへの従属の度合いを深めさせているのはなぜなのか。
結局「闘う政治家」のキャッチフレーズのもとに,国民に対して,自分を自立した誇りのもてる国づくりの担い手と印象づけたいようだが,その実態は,アメリカへの従属的軍事一体化の止めどなき推進となっている。
雇用や社会保障など国民生活充実のためには「闘わ」ず,アメリカ様とはまかりまちがっても「闘うことなど決してない」。そして「闘う」のは従属的軍事大国化のためだけとなる。これはもう百害あって一利なし。就任前からで申し訳ないが,早く辞めてもらうしかない。
さて,10月からは牧野広義さんの講座「『資本論』から哲学を学ぶ」が始まりますね。お気づきかと思いますが,講師の牧野さんは,この講座の基本テキストである『ジェンダーと史的唯物論』の執筆者でもあり,この本をつくった研究会の中心メンバーの一人です。
おつきあいをさせていただいて10年以上になりますが,もっとも信頼できる哲学者の一人であり,私もたくさんのことを教えてもらっています。
『資本論』というと,経済学者が経済学の角度に引きつけて読むというのが定番ですが,『資本論』はとても多面的な内容をもった本であり,それは弁証法や唯物論,史的唯物論など哲学の著作ともなっています。牧野さんの講座はそこに集中的に光をあてるものとなっています。ですから,すでに『資本論』講座を「修了」された方にも,たくさんの新しい論点がうかびあがることになると思います。ぜひ,ご参加ください。
では,前回の講義に対するご意見・ご感想に,今回も簡単なコメントをつけていきたいと思います。なお,最初のご意見・ご感想は,本来,前回の「つぶやき」でコメントすべきものが抜けてしまったものでした。遅くなって,申し訳ありません。
◇私は春闘講座で、『ジェンダーと史的唯物論』を学習協の書籍売上高アップする為に購入しました。幸運にも、難しく、一般受けしない本をテキストに開講してくれたこと大変ありがたく思っています。
日頃感じる事ですが、今地域においても、各分野各団体においても光り輝いているのは女性だ。一生懸命、熱心に行動しているのは女性です。
私は、時折、婦人月刊雑誌『メイプル』とか『グラッイア』など、気に入った女優が表紙の時、買います。流行ファッションはもちろんのこと化粧の仕方、ダイエット、高級な商品ばかり宣伝しています。毎号、同じように思えます。書店を見ていても売れているように思いません。商業マスコミ、出版社のねらいは何なのか。既婚女性層にはどのように影響しているのか教えて下さい。
マルクス主義フェミニズムの言葉から上野千鶴子氏の名前が出ている。彼女の愛弟子に熱狂的な阪神タイガースファンを自認する遙洋子(ハルカ・ヨウコ)氏がいる。彼女の話を聞いていると、男性に対して、いきまいている。何か女性側から孤独、孤立感がうかがえます。どう思いますか。
講義全体、男女関係の変化、社会構造の変化、その根源に流れているものは、経済、経済学なんだと力説している様に思います。
──雑誌の件ですが,詳しいことはわかりません。とはいえ長く発行されているのであれば,やはり採算がとれる程度には売れているのでしょうね。発行部数が少なくとも,広告料収入が多くて採算がとれているということもありえます。「格差社会」の進行にともない,多くの雑誌は期待される読者(ターゲット)をかなり狭く絞り込んでいます。「既婚女性」の全体ではなく,「ある程度お金にゆとりのある既婚女性」に読者をしぼりこんだ雑誌があってもおかしくはありません。
──遥洋子さんについては『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』の他は,ほとんど知りません。大学院で何年か直接上野さんに学ばれたということでしたね。しかし,第1回の鰺坂論文で見たように,上野さん自身が階級支配と性支配の両者を切り離してしまった理論展開をしています。そういう弱点(不十分さ)が,テレビなどでの遥さんの発言にも現れているのかも知れません。とはいえ,それは彼女の弱点という以上に,ジェンダー視角をふくめた現代社会の全体像を明らかにするという理論研究の遅れであるとも思います。
──この講座が「経済」の重要性を強調しているという指摘はそのとおりですが,前回第3回の講座では「ケガレ」といった「思想」の問題,家族や婚姻制度の歴史的変化といった問題も紹介しました。経済とその他の諸要因との相互関係を明らかにしていく作業は,まだまだこれからですね。
◇前回、書き忘れたことですが、「日本で遅れているのは『女性の権利』だけではない、人権全般に関して後進国である、先進国と呼べないのではないか」という指摘は、とても納得できました。
試験前日の一夜づけのような、ものすごくいっぱい頭に詰めこんだ気分です。昔、歴史の暗記で「1925年普通選挙法」と覚えましたが、女性が含まれていないのに何故「普通」なのか、「男子皆選挙」とでも表記するべきでないのか、当時から不満でした。(法律の名前がそうだったのかもしれませんが……)、his story(history)ではない、女性も含めた自分たちの歴史を新たに発掘していくことが必要なのでしょうね。和歌山という地域の女性史にも、目を向けていきたいと思っています。最後に紹介された天皇家の本は私も読みました。雅子さん、本当に気の毒だと私も思います。
──「和歌山の女性史」という視角は面白いですね。歴史というのはさかのぼるほどに地域差が大きくなるところがありますので,対象をしぼりこんで勉強・研究していくというのは案外生産的だと思います。学校の歴史の先生や,あるいは定年退職された歴史の先生をまきこんでグループをつくることができると,勉強もしやすいかも知れません。
◇『女と男の日本史』に自分の知らない事が次から次へと出ていてビックリしました。この講座と少し離れますが、経済に関する質問。私は堀江一人で株の時間外取引、株式分割を考え出したとは思わない。ある金融グループは、ライブドアに800億円の資金調達、きわめて短期に160億円の荒稼ぎをした。このしくみ、手法について、日本の金融市場が歪み隠せない所まで来て、投機性をおび腐敗しきっているのか。
私は最初から、オリックス、阪急の三井住友銀行、大和証券がぐるになって阪神を乗っ取ったと見ているが極論か。氷山の一角のように少し頭が出ていて、皆に嫌われたのが村上ファンドになったのと違うのか。
──私は特別な情報ルートをもちませんので,公開されている以上のいわゆる「裏」情報は知りません。とはいえインターネット上には,たくさんの「噂」「憶測」が流れており,その中には,真実を反映しているものもあるかも知れません。ホリエモンらは現在の投機に関する公的(法的)ルールから逸脱したことによって逮捕されたわけですが,しかし,そのような逸脱が彼らだけの手口でないというのはおそらくそのとおりでしょう。また,そのようなやり口をとらせる競争の圧力と脱法への誘惑が大きくなる現実が,一連の規制緩和によってつくられているのもそのとおりだと思います。こうした日本の金融市場の投機市場化の推進については,やはり投機に強い外資(特にアメリカ資本)の役割が大きいのだろうと思います。「構造改革」の重要な一面ですね。
◇宗教観、財産権、結婚形態が、支配者側内部の変化によって多少時間的に遅れて、庶民,被支配者側に起こっていることがわかった。歴史を動かす原動力とは何か。結局、人民の運動次第ということになるのか。寿司屋で女性が寿司をにぎっていない。この事実、『女と男の日本史』で始めて知った。江戸時代以降、男が独占とある。現在、回転寿司では女性従業員が働いている。これをどのように説明したらいいのか。『女と男の日本史』の30Pからの女帝の時代の所、興味持っていたが、省いた。当時、血のけがれという問題があったので女性天皇が出現したという意見もあるが、そうなのか。又、万葉集には権力争いの怨念があるというが本当か。
──支配者たちの思想や制度が次第に社会全体に拡がっていくというのは,歴史の中ではよくあることのようです。歴史の原動力については様々な角度からとらえることが可能でしょうが,大雑把にいえば,ある経済的発展(特に生産力の発展)がゆるす範囲の枠内で,階級闘争・社会闘争が新しい歴史の制度をつくっていくといえるでしょうか。相撲の土俵に女性があがることについては,数年前にもいろいろ議論があったようですが,そのような「女人禁制」が,江戸時代などある段階でつくられた女性をケガレとむすびつける思想の産物だというので,近年になって「男女平等」「女性を蔑視するな」という意見によって乗り越えられつつあるわけです。寿司や酒づくりの職人なども同じことだろうと思います。
女性天皇の問題については,まずはご自分でテキストをお読みください。「権力争いの怨念」というのは,『古事記』や『日本書記』などの歴史書が,当時の権力者を正当化・美化する役割をこめて書かれたという問題のことでしょうか。これについては「つくる会」の教科書を応援している今日の日本の政府にも多分に同じところがありそうです。
◇8月15日、小泉首相が靖国神社を公約通り参拝したことによるアジア外交の行きづまりが明白になった。財界(特に経済同友会)からの自制を振り切って参拝したのは首相の信念からなのか? それとも何か首相を参拝させる別の圧力が働いていたのか?
──そもそも戦後日本の支配層は侵略戦争を推進した張本人たちを出発点に形成されています。ですから,まず本人たちが根っからの靖国史観派であるわけです。同時に,それは少なくない国民の意識でもあります。また遺族会のような大きな組織の考え方ともなっています。ですから,小泉首相本人の個人的な歴史観と,それを応援する小さくない力を背景に,彼は財界やアメリカの反対があっても靖国参拝をしたということでしょう。政治は「経済決定論」的には決まらないわけです。なお,小泉首相は8月15日の参拝直前に,何度か世論調査をしていたとの新聞報道もありました。
◇フランス革命などの人権尊重には男女平等は含まれなかったことがよくわかった。また、資本主義にも男女平等の概念は含まれないこと(当然ですが……)がよくわかった。政治や経済だけの歴史学習ではだめだということがわかりました。いつの時代も、社会の移り変わりがある中で、比率はどのようなものであっても、男も女をモノのように、女も男をモノのように、自分の生きる手段として必死に生きてきたのだと思いました。特にそれが権力者の中で激しかったし、一般の民衆の中では、あんまり男やら女やらで差などなくて身もフタもなかったのがよくわかって面白いです。そういうお互いに男女、両性が互いをぶちまけあって、けんかして、でも愛し合って生活できたらいいなあと思うし、そういうふうにみんな思える情緒的な成長が社会を明るく公平で、みんな幸せになれる人間関係や社会環境を作るのだなと思いました。
──資本の論理には,自ら男女平等を推進する力がふくまれるわけではないが,平等を求める社会の力を生み出す原動力にはなるということですね。資本の論理はそのように矛盾した性質をもっているわけです(このあたりは牧野先生にお聞きください)。女性史・家族史・社会史といわれるような歴史の勉強は,生きた人間の個々の姿が見えて,なかなか面白いです。たとえばルイス・フロイス『ヨーロッパ文化と日本文化』(岩波文庫)を,ながめて見てください。中世の日本人庶民の生活ぶりがやさしく学べます。もちろん,あわせて全体像をとらえることも大切ですが。
◇女性の家へ、複数の男性が通っていた時代に子どもができた場合、誰の子として、どのように育てたのですか? 『女と男の日本史』のテキストの飛ばし読みがおもしろかった です。絵などの資料も興味深いです。皇室の話にも興味をもちました。
──妻問婚の段階の子どもですね。基本的には女性の子どもとして,女性が育てたようです。特に早い段階では女性の側に財産相続の中心的な権利がありましたから。妻問婚から婿取婚への過渡期(両制度の混合期)を反映した『源氏物語』については,夫婦・親子関係の具体的な分析が加えられています。これもなかなか面白いです。不破哲三『ふたたび「科学の目」を語る』(新日本出版社,2003年)などを読んでみてください。
他方で「絵」などを用いての歴史研究や女性史研究としては,こまかい実証についてはまだ課題があるのでしょうが,たとえば網野善彦・宮田登『歴史の中で語られてこなかったこと──女・子供・老人からの「日本史」』(洋泉社,2001年)などが刺激的です。これも読みやすい本になっています。
◇結婚の際、当然のように女性である私が改姓するものであると、だれもが疑わないことであったが、自分でなくなるような悲しい気持ちになったことを思い出しました。また、小・中・高と歴史の授業を受けて来たが、なぜ、ジェンダーのような事に関しても何の疑問も持たなかったのだろうか? 歴史=暗記物という認識で嫌いであり、不得意な科目であり、興味がわかなかった科目でした。本当はとても大事なことであったのに……。いろいろな意味で「教育」の重要性を再認識いたしました。
──もっとも根本的には人間の知識(学問)の到達に歴史的な制約があるという問題がありますね。私もジェンダーについて学びはじめたのは,ようやく40才をすぎてのことでした。学校「教育」の中では,これをあたえられた経験がありません。また歴史の教科書に登場する女性が非常に少ないなどの点については,歴史を男性の目でとらえてきたことの限界が反映しているという意見も出されています。
最近のテキストではこの点の改善がかなり重視されるようになっており,例えば『未来をひらく歴史・第2版』(高文研,2006年)などは,対象が近現代史に限られていますが,文字通り歴史をひらく女性たちの取り組みや時代時代の女性たちの生活ぶりにもかなりのページがさかれるようになっています。もっともそのようなことを「教育」に反映することが気に入らないという人たちもいますので,ご指摘のようにキチンと歴史研究の到達を反映した教育をつくることは大切です。その点では,教育基本法「改正」案が,教育内容への国家による介入を無制限に広げるものになっていますから,これを実現させない取り組みは非常に大切です。
◇時代によって職業が変わることに対して「そうやなぁ」って思いました。いままでも交通誘導や警備員や大型バスの運転手なども男ばかりの職業だったものが、女性も就いてきていることが職業差別もなくなっているんだなぁ~と思いました。でも、労働条件が女性も男性も同じだというのは違うと思う。前にも聞きましたが、女性の労働条件にそったものであるならばよいかと思います。
──「女だから」「男だから」という理由での権利の格差(差別)が行われなくて,そして,女も男も安心して働くことのできる労働条件,これをなんとかつくっていきたいですね。
◇『女と男の日本史』…よくわかった。ちょっとロシア語をかじったので、今のプーチン政権がすすめている石油、天然ガスをカードにして、かなりの経済成長をしていると聞いている。もう少し詳しく御説明願いたい。
──ロシア経済については詳しいことは知りません。ただし基礎的な情報であれば,外務省の次のページにもまとめがあります。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/russia/keizai.html
インターネットで「ロシア 経済成長」と検索すると100万以上のサイトがひっかかるようですので,ご自分で勉強を深めてください。『経済』にはときどき論文があります。
◇昭和天皇が自分は一夫一婦制でいくと言ったのはどうしてなのかと思った。講義のスピードが早くて、なかなかついていけなかった。社会の中の女性の地位が何によって左右されるのか、しっかり学びたいと思った。
──昭和天皇によるその選択の理由はよくわかりません。たんに欧米の常識に学んだということかも知れませんが。今後の学習としては,ぜひ講座全体が終わったところで,まず利用した各種テキストをザッとでも読み返してみてください。その中から,次の課題を見つけていただきたいと思います。それぞれのテキストにはかなりの数の参考文献・引用文献が紹介されています。それらを利用するのも一つの方法です。
また,おっしゃるとおり,社会の中の女性の地位を左右する要因がなんであるかを,具体的な現実の中に探っていく作業は,地味ですが非常に手堅く重要な仕事です。講座でくりかえしたように『ジェンダーと史的唯物論』にかけている最大の問題は,その直接的な歴史研究でした。これから大いに学び,研究されるべき課題だと思っています。
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