CIA等で組織する国家情報会議が「世界潮流2025・変化した世界」を公表。
世界の構造変化を大胆に予測している。
米中印「3国時代」が到来と予測 2025年の世界(共同通信、08年11月21日)
【ワシントン20日共同】米中央情報局(CIA)などで組織する国家情報会議(NIC)は20日、2025年の世界情勢を予測した報告書を発表した。米国の影響力が衰える一方で、中国やインドが著しく台頭し、米中印の3国が並び立つ時代の到来を予見した。日本については「米中両大国の板挟み」になり、大幅な外交戦略の見直しを迫られるなど、埋没感が強まる可能性を指摘している。
2020年の世界情勢を予測した05年の報告書で「米国は最も重要な国家であり続ける」と自信を示したのに比べ、大きな後退。変革期を迎えた超大国の現状を浮き彫りにしたと言えそうだ。
報告書は今後の20年間が「新秩序への移行期間」で「危険に満ちている」と指摘。第2次大戦後に続いた米国中心の世界秩序が崩壊し、国際情勢が不安定化することを警戒した。米国は相対的な優位を維持するものの、中国とインドが多極化時代の新たな大国として、米国と影響力を競い合う存在になるとした。
ロシアはそれら3国と並ぶ勢力を確保できるかどうか不透明としている。
日本は現在と同じ「中の上」程度の国際的地位を維持するが「米中の経済力や戦略の影響を大きく受ける」と予想。高齢化など人口構成の変化や政治、経済システムの変化が押し寄せ、自民党1党支配の時代は「完全に終わりを告げるだろう」と予測した。
米国家情報会議(NIC)が20日発表した、2025年の世界情勢を予測した報告書の主な内容は次の通り。
一、経済のグローバル化などにより、2025年には第2次大戦後に構築された米国中心の国際秩序はほとんど姿をとどめていないだろう。
一、米国が経済、軍事面で相対的な優位を維持するものの、中国とインドが多極化時代の新たな大国として米国と影響力を競い合う存在になる。
一、中国は今後20年間、他のどの国よりも影響力を強める。2025年までに中国は世界第2の経済大国になり、軍事力でも世界をリードする存在になる。
一、インドも高度経済成長を維持し、世界におけるひとつの「極」に。
一、日本は現在と同じ「中の上」程度の国際的地位を維持するが、米中の経済力や戦略の影響を受け、外交戦略の見直しを迫られる。
一、欧州は緩やかな成長を続けるが、影響力は失われる。
一、高齢化など人口構成の変化から日本には政治、経済システムの変化が押し寄せ、自民党1党支配の時代は完全に終わりを告げるだろう。
一、朝鮮半島では2025年までには南北国家が統一される可能性がある。統一に至らない場合は、緩やかな連合国家が形成されるとみられる。
一、北朝鮮が核兵器開発計画を完全に放棄しているかどうかは不確定要素。
一、ロシアはより豊かになり影響力を強める可能性が高いが、原油価格の動向に大きく左右される。
(ワシントン共同)
2025年「世界は多極化」…米国家情報会議が予測(読売新聞、08年11月21日)
【ワシントン=貞広貴志】米国の中央情報局(CIA)など16情報機関で構成する国家情報会議(NIC)は20日、世界情勢を予測した報告書「世界潮流2025」を公表した。
中国、インドの興隆により、富と経済力が「西から東」へと動くことから、世界は多極化へと移行。一方で、米国は支配力を減じ、「西側同盟の影響力は低下する恐れがある」と警告した。
報告書は、約20年後の未来をほぼ5年ごとに示すもので、これが4回目。
報告書は、技術拡散により、生物・化学兵器といった「大量破壊兵器を用いたテロ攻撃が起きる恐れが高まる」と指摘。多極化も世界の不安定化に拍車をかけると予測した。
また、中国を「今後20年間に最も影響力を増す国」と位置づけ、軍事大国の地位を築くだけでなく、2025年までに日本を抜いて世界第2の経済大国に浮上すると予測。この結果、日本は、中国、インドに次ぐ4位に転落するとし、国際的に「中の上の地位を維持する」ものの、「就労人口減少に伴い、成長率維持に苦労する」と見通した。
日本の動向については、自民党支配が終焉(しゅうえん)し、同党が「競合し合う多くの政党に分裂するかもしれない」と指摘。外交政策については、米中の出方に影響されるとして、〈1〉中国の経済成長が続けば良好な対中関係を維持〈2〉中国が域内各国に敵対的になれば東アジアの民主国家や米国とともに影響力を行使〈3〉安保面で米国の対日貢献が弱まれば中国に接近〈4〉米中の政治・安保協力が顕著になれば、その傾向に追随――とする四つのシナリオを提示した。
2025年の世界は核兵器の脅威高まる、米報告書(AFPBBニュース、08年11月21日)
【11月21日 AFP】米国家情報会議(National Intelligence Council、NIC)は20日、核兵器が実際に使用される危険が2025年に向けて一層高まるとした報告書を発表した。
NICは『Global Trends 2025 - a Transformed World(2025年の世界動向 ― 変化した世界)』と題された報告書のなかで、近い将来の世界は、食糧や水などの資源をめぐり紛争の危機が高まるうえ、「ならず者国家」やテロ組織が核兵器を入手する危険にさらされると警告し、出生率や貧富の格差の拡大、気候変動がもたらす不均衡が緊張をさらに高めていくと結論づけた。
さらに、アフリカや南アジアではいくつかの国が消滅し、中央ヨーロッパでは国家機能を犯罪組織に乗っ取られる国が現れ、核の拡散により核兵器が使用されるリスクも増すとしている。
特に報告書は、核兵器につながる核開発や核技術の獲得に関心を示す国が多い中東地域で、軍核競争が激化する危険性を指摘。「イランの核開発プログラムに関する反応として今後15-20年の間に、イランの周辺国が核兵器の入手に走る恐れがある」と警鐘を鳴らす。
さらに、中東諸国が核武装した場合、米ソ冷戦時代にみられたような戦争を抑止する外交関係が構築されるかどうかは不透明で、むしろ核兵器を手にした「安心感」から、これらの国が低強度紛争、テロ、通常兵器による攻撃を起こしやすくなる恐れさえあると指摘した。
核を持つ国が現在よりも増えれば、他国やテロリストに核兵器を供与する国が現れる可能性が増すだけでなく、核兵器、核物質、核技術の盗難リスク、さらにこれらを不法に入手した組織が核兵器を使用する危険性も高まると報告書は警告している。(c)AFP/Jim Mannion
「米の圧倒的優位弱まる」 米情報機関が世界展望(日経新聞、08年11月21日)
【ワシントン=弟子丸幸子】米中央情報局(CIA)などで組織する国家情報会議(NIC)は20日、2025年の世界情勢を展望する報告書を発表した。米国について「圧倒的優位が弱まる」とし、超大国ではなくなることを自ら認めた。中国が世界第二の経済大国に成長するなど「富は西洋から東洋に移り、多極化した世界になる」と分析した。
「変貌(へんぼう)した世界」と題した120ページの報告書は、2025年までに世界は新興国の台頭と経済のグローバル化により「第2次世界大戦後に生まれた国際体制が、ほぼ跡形もなくなる」と予見した。通貨ドルに関して「ドルの国際的な役割は衰え、複数の基軸通貨が並立するなかでの筆頭格となる可能性が高い」と指摘した。
「世界に最も影響を与える国」は中国になると展望。「世界最大の資源輸入国、そして最大の汚染国になるかもしれない」と指摘した。
「米は地位低下、中国が台頭、朝鮮統一」米国家情報会議が予測(産経新聞、08年11月21日)
【ワシントン=山本秀也】米国家情報会議(NIC)は20日、2025年の世界情勢を予測した報告書を発表した。中国、インドの台頭など世界の多極化が進むなか、相対的に米国の影響力が低下すると悲観的な判断を示している。また、韓国と北朝鮮は25年ごろの国家統一が予想されるものの、核開発の放棄が実現できるのかは「不確実だ」としている。
この報告書は、米中央情報局(CIA)などの情勢分析を踏まえたもので、5年ごとに世界の未来像を描いている。今回の報告書では、金融危機の影響や原油の先高傾向を織り込み、これまでの情勢予測を修正。向こう20年ほどが「新秩序への移行期にあたる」として、不安定化を警戒している。
米国は、経済力や国際的な影響力低下が避けがたい半面、軍事技術の進歩に支えられて、なお世界トップの大国にとどまるとみている。さらに、「中東とアジアでは、依然バランサーとしての役割を求められる」と指摘した。
世界が多極化するなかで、ライバルとなるのは、中国、インド、ロシアなどの新興国だと分析。とりわけ中国については、25年までに「世界2番目の経済規模と主要な軍事力を獲得する」と予測している。
テロ組織は、25年までに組織再編を経てなお存続するとみている。大規模テロ事件は、生物・化学兵器の使用が懸念されるとしている。核兵器や放射性物質によるテロの可能性はやや低いものの、インド、パキスタンなどに続く実質的な核保有国の増加で、核拡散が進むことを懸念している。
日本については、自民党の優位が崩れ、内政・外交とも再構築を迫られるとみている。日米同盟は維持されるものの、米国の国力低下を受けて、「同盟の力は今日ほど強固ではなくなる」と予測。日本の地位は米中のパワーバランスの間で「板ばさみ状態」になるとして、日本が親米、親中に傾く可能性など4種類のシナリオを挙げた。
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