この発言は、いくらなんでもヒドすぎるだろう。
「関東大震災」で、いったいどれだけの被害が出ると考えているのか。
井戸・兵庫県知事「関東大震災が起こればチャンス」(朝日新聞、08年11月11日)
兵庫県の井戸敏三知事は11日、和歌山市で開かれた近畿ブロック知事会議で、関西経済の活性化を論じる中で、「関東大震災はチャンス」などと述べた。首都圏の災害時における関西の補完機能の重要性を指摘した内容だったが、他都市の被害を歓迎するように取られかねない発言に、参加した各知事からは「不適切だ」との声が上がった。
井戸知事は11日夜、神戸市内で記者会見し、発言の真意について「東京一極集中へのリスクの高まりと、リスクへの備えを(事前に)引き受けるのが関西のチャンスになるという意味だ」と説明。「言葉づかいが適切でなかったことは反省しなければならない」と述べたが、発言は撤回しなかった。
会議には近畿2府4県と福井、鳥取、徳島、三重の知事と副知事が出席。井戸知事は「東京一極集中を打破するための旗を揚げなければならない」と前置きしたうえで、「関東大震災なんかが起これば(首都圏は)相当ダメージを受ける。これはチャンス」と発言。さらに「首都機能を関西が引き受けられる準備をしておかないといけない」などと述べた。
井戸知事は会議途中で公務のため退席。会議後の記者会見で、鳥取県の平井伸治知事は「阪神大震災の被災県である兵庫県の井戸知事だからこそ、表現については訂正するべきだ」。大阪府の橋下徹知事は「(首都機能の)バックアップ機能が必要だという真意は、全知事がわかっている。でも、不適切な発言ばかりやっている僕から見ても不適切だった」と疑問を呈した。
井戸知事は旧自治省で大臣官房審議官などを経て、阪神大震災の翌年の96年に兵庫県副知事に就任した。01年に初当選して現在2期目。
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〈井戸敏三・兵庫県知事の発言要旨〉
まず、東京一極集中をどうやって打破するかという旗を揚げないといけない。物理的には、関東大震災なんかが起これば相当ダメージを受ける。これはチャンスですね。チャンスを生かす、そのための準備をしておかないといけない。機能的には、金融なんです。金融とマスコミが東京一極集中になっている。東京にいった企業をもう一度、関西に戻せというカムバック作戦を展開していく必要がある。(中略)そういう意味では、防災首都機能を関西が引き受けられるように、あるいは第2首都機能を関西が引き受けられるような準備をしておかないといけない。
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「関東大震災が起きれば、(関西経済に)チャンス」。首都圏の大地震発生に期待を寄せるかのような兵庫県の井戸敏三知事の発言に、防災に携わるボランティアらからは批判の声が相次いだ。
神戸市の阪神大震災の復興公営住宅で高齢被災者の見守り活動を続ける市民グループの東條健司代表(68)は「完全な失言。関西が政治や経済の中心になるために地震が起きて欲しいと思っているように聞こえる」と絶句した。国内外の被災地で支援を続けるNPO法人理事長の黒田裕子さんも「関東に地震が起きれば、関西がそれ見たことかと喜んでいるように聞こえてしまう」と残念がる。
首都直下地震をシミュレーションした小説「M8」などの著書のある神戸市在住の作家、高嶋哲夫氏は「兵庫は地震の悲惨さを一番、身にしみている県であり、全国から支援を受け、やっと立ち直ってきた立場。ほかの地域の被害を利用しようというのは、口が裂けても言うべきではない」と批判する。
神戸市幹部も「阪神大震災当時、真っ先に神戸に駆けつけてくれたのが関東のボランティアだった。そのことを考えると言葉を失う」とあきれる。
一方、阪神大震災の犠牲者遺族らでつくるNPO法人元理事長、白木利周(とし・ひろ)さんは「不適切な感じはしない。地震が発生すれば大阪や兵庫が団結して復興に当たり、関西の活性化にもつなげるという意味だと思う」と理解を示した。
しかし、東京都のある幹部は「震災を経験した県の知事にあるまじき発言。関西圏の繁栄を目指すのはいいが、あまりに視野が狭い」とあきれる。昨年4月には、石原慎太郎都知事が阪神大震災を巡って「(自衛隊の派遣を要請する)首長の判断が遅かったから2千人余計に亡くなった」と発言。井戸知事が「失礼な発言だ」と反論した経緯がある。このため、都庁内には「今回の発言は、石原知事発言への意趣返しでは」と受け止める幹部もいる。
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