消費税増税と歳出削減の2つで経済財政諮問会議も財務省も意見は一致している。
意見に相違があったのは,どちらを優先的に行うか。
増税を優先すれば,歳出削減の動きが鈍り,結果として公共事業削減が思うように進まなくなる。
そこが建設族を多く含む「自民党・官僚主導」と,自動車・電機を主力とする今日の「官邸主導」との本当の対決点。
つまり本間氏の人事は,財界新主流派(製造業多国籍企業)による財界旧主流派(ゼネコン関連企業)主導政治の切り崩しという意味をもつことになる。
「消費税問題は議論急がず、法人税率下げは拙速を回避=本間新政府税調会長」(朝日,11月8日)。
「[東京 7日 ロイター] 政府税制調査会(首相の諮問機関)の本間正明会長は7日、就任後初の記者会見で、消費税の税率引き上げについて、急いだ形の議論は必要ではないとの認識を示した。来年度税制改正答申は遅くとも12月第1週にとりまとめる方針を明らかにしたが、焦点のひとつである証券税制の優遇措置の扱いについては言及を避けた。
持論の法人税の実効税率下げの問題では「拙速な意見集約はすべきでない」と述べた。
<消費税問題、議論は急がず>
来年秋からの抜本税制改革議論のなかでの消費税問題の扱いについて本間会長は「経済の環境は大きく変わっている。自然増収的要素もある。政権としてのスタンスは、諮問会議でもこの2年間は成長を重視することとなっている」と説明。「消費税を突出して議論するやり方は、新税調の考え方として取っていない」とし、「急いだ形での議論は必要ではないのではないか」との認識を示した。
7日の税調総会でも税制改正議論の視点として「成長力を再生し、その果実を税財政に取り込む好循環が求められる」と強調。成長戦略を掲げる安倍政権の方針を踏まえ、消費税増税議論を急がない考えを強調した。
<来年度税制改正の答申、12月第1週にとりまとめへ>
来年度税制改正のテーマについては、今後税調のなかで議論してもらうと述べるにとどめ、焦点の1つである証券税制の優遇措置の扱いについてもコメントを避けた。
一方、経済活性化税制の柱とみられる法人税率の引き下げでは「予断をもっていないが、準備の議論が不十分で、詰める作業に1カ月しかないので、あまり拙速な意見集約はすべきでない」と述べ、現時点では、来年度税制改正の対象とは考えていないことを示唆。
今後の段取りは、次回会合で成長と税制の関係について審議した後、来年度税制改正に向けての項目について3グループにわけて議論を行う。答申は「遅くとも12月第1週にはまとめたい」とした。
さらに、来年秋の抜本税制改革に向けて、まず「来年年明け以降、中長期的視点からの総合的税制改革の審議を始めたい」と述べ、税制が経済や財政に与える影響などのマクロ分析や企業や家計への影響に関するミクロ分析など基礎的な作業に取り組むという。そのうえで「税の全体的な設計について後半から総合的な検討を始める」と語った。
<諮問会議との連携を強調>
新体制での運営方針では「経済と税制は切り離すことが出来ない」と指摘。「政権の方針を議論する経済財政諮問会議との連携は当然必要になってくる」と強調した。
さらに、税制改正で実質的な決定権を握ってきた自民党税調との関係では「従来は政府税調が基本的理念と枠組みを整理し、党が具体的な設計を行ってきた。今年に関する限り、この仕組みが大きく変わるとは考えていない」と述べた。ただ、フリーディスカッションを拡充させることで、「政府税調として、従来よりクリアーカットのステートメントを出す可能性はある」と自信を示した」。
「新『政府税調』スタート 官邸主導で成長路線」(東京新聞,11月8日)。
「政府税制調査会(首相の諮問機関)が、二〇〇七年度税制改正に向けて議論を開始した。安倍晋三首相は、会長以下メンバーを刷新、事務局体制も変えるなど、これまでの財務省主導を封じ、官邸色を鮮明にした。しかし「中身」の議論はこれから。安倍政権が掲げる経済成長路線一辺倒になり、個人向け課税や財政再建論議が置き去りになれば「あるべき税制」を論じる政府税調の存在意義が問われかねない。 (経済部・金森篤史)
■原点
「原点に立ち返って、国民の立場に立った税制論議をやれるようにしたい、というのが首相の発想だ」。塩崎恭久官房長官は七日の記者会見で、政府税調の運営手法の変更をこう力説した。
政府税調の運営は、政令で「内閣府が財務省と総務省の協力を得て行う」とされているが、これまでは、財務省が実質的に事務局を務め、開催場所も財務省内だった。それを内閣府に移し事務局にも加えることで「財政再建重視の財務省の論理を代弁をしているだけ」という批判にまず応える狙いがある。
「官邸主導」は、会長人事から着手した。財務省が推した石弘光・前会長の続投を官邸がはねつけ、成長路線に理解のある本間正明大阪大大学院教授を会長にした。メンバーも、正委員には業界代表者ではなく、税の専門家を多く配置することで、純粋な税論議を行う態勢を整えた。安倍政権は政府税調の変化を「形」では示した。
■明快
「税制改革の中で、喫緊の課題として、わが国経済の国際競争力を強化する」。安倍首相は政府税調の冒頭、こう強調した。
「安倍理論」は明快だ。財政再建に向け、まず歳出を削減する。同時に経済成長を促して税収を増やす。それでも足りない場合の最後の手段が増税だ。本間会長も「成長力、競争力を再生し、その果実を税財政に取り込む好循環をつくることが求められる」と呼応した。
政府税調も当面は企業減税を優先しそうだ。年末の来年度税制改正に向け、企業が求める法人税の減価償却制度の見直しが中心テーマになる。
ただ、今年の税制改正はそれほど大きくはない。来年四月に統一地方選挙、夏に参院選を控えており、安倍政権とすれば、選挙に有利とはいえない消費税など抜本的な税制改革に手を付けるのは、来秋以降とする方針だからだ。
それでも、企業だけを優遇し、来年から所得税の定率減税が全廃されるなか、個人向け税制に手を付けずに、消費税の増税を論議しても国民の理解を得るのは難しい。中長期的な税制について政府税調がどう存在感を発揮するのか、本間会長らの手腕が問われる。
■衝撃
七日午前、永田町と霞が関の税制関係者に衝撃が走った。
「与謝野馨・自民党税制調査会長辞任」。体調不良が理由だが、与謝野氏といえば、必要なら増税もいとわない財政再建論者。中川秀直党幹事長や尾身幸次財務相ら経済成長を重視する「上げ潮派」が多い政府・与党の中で、異色の存在だ。辞任により、党税調が財政再建色を薄め、政府・与党全体が「上げ潮派」になる可能性がある。
この日、いみじくも尾身財務相は政府税調でこう発言した。自民党税調の役割を「選挙がある人間が議論しており、結局はどういう税制なら選挙に勝てるかだ」と説明。一方、政府税調については「(税制の)理想の姿を描いていただく」と紹介した。
選挙と税の理想像のはざまで、税体系をどう構築するか。政府税調の役割は、ますます重くなりそうだ」。
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