インド関係の記事をひとまとめにして。
インドを訪問したポールソン財務長官は、インド政府がとり始めた海外資金流入規制に反対の立場を表明し、また原子力協定の実施を強くもとめている。
とはいえ、この協定には、アジアでの核開発競争を激化させるとの理由で、アメリカ国内にも反対論があるようす。
また別の機会にポールソン氏は、経済大国と途上国との大きな意見対立があるドーハラウンドで、あいだをとりもつことをインドに期待してもいるらしい。
さらにインドをも「パートナー」と位置づけ、その為替改革の進展を、中国よりも好ましいものとして評価している。
なおインドには「中間階級」より遥かに多い「貧困層」が存在するが、経済成長に取り残された彼らの土地と水をもとめる取り組みも行われている。
アメリカ大企業GEによる、アメリカ経済の減速があっても、中国・インドが成長しているから大丈夫との発言も。
巨大多国籍企業が、自国経済への関心を薄れさせていくのは、どこの国でも同じである。
海外資金流入の制限、インド経済の競争力を阻害する恐れ=米財務長官(ロイター、10月29日)
[ムンバイ 29日 ロイター] インドを訪問中のポールソン米財務長官は、インド政府が、海外からの投資急増に伴うリスクを減らすことは「多くの点で」正しいが、海外資金流入の制限は、インド経済の競争力を阻害する恐れがあるとの認識を示した。
ムンバイで行われたインフラ関連の会合で述べた。
長官は、資本流入の制限が意図せざる結果をもたらす「鈍器」になる可能性があると警告。
「インドが現在享受している活気と成長を長期間維持するために、インドの同僚たちに対し、経済自由化と金融システム整備に向けた対策の継続・加速を求める」と述べた。
インド政府は先週、国内株式市場への匿名性の高い資金の流入に歯止めをかけるため、新対策を発表したが、ポールソン長官がこれに言及したのは初めて。
長官は「デットファイナンスやエクイティファイナンスへの制限、資産配分に関する金融機関への制限は、最も効率的な資源利用を阻む要因になる」と述べた。
ポールソン米財務長官、インドに原子力協定の実施求める(IBTimes、10月29日)
インドに訪問中のヘンリー・ポールソン米財務長官は28日、米印間の原子力協力協定に反対しているインド共産党の本拠地、カルカッタで、協定を迅速に実施することを求める発言を行った。
同長官はインドの貧困層への銀行サービス導入に関する会談の後、報道陣に対して「これは非常に重要な協定だ」「我々は、原子力協定が可能な限り早期に実施されることを望んでいる」と述べた。
原子力協力協定は、30年間にわたる米国の核拡散防止政策を覆すものである。協定によると、米国は核拡散防止条約(NPT)への調印を拒み、核実験を行っているインドに対して核燃料と技術を提供することが可能になる。
インド政府は先週、共産党との協議の後に協定の最終合意までに1カ月以上は要するとの見通しを明らかにした。ポールソン長官はインド政府が内部の対立を解消する必要があると認めている。
同長官は27日から31日の日程でインドを訪問しており、カルカッタ、ムンバイ、ニューデリーを訪れる予定となっている。同長官は、インドの経済改革の強化を推進し、停滞している貿易交渉の打開策を模索すると述べている。
協定は米国内でも反対を受けている。議会の一部では、米国の核燃料がインドに供給されれば、核兵器の製造に使用される核物質の供給の制限が無くなり、アジアでの核開発競争を加速させるとの批判が行われている。
インド貧困層、600キロのデモ行進でニューデリー入り(AFPBBNews、10月29日)
【10月29日 AFP】1か月にわたって行われた貧困層による数千人規模のデモ行進は28日、ニューデリー(New Delhi)に到着した。貧しい農民、土地を持たない労働者、先住民らが参加し、インド経済の急成長に取り残された貧困層の窮状を訴えた。
男性、女性、子どもを含むデモの参加者は緑と白の国旗を振り、自由の象徴である身分制度カーストの下層出身であった故ビームラーオ・ラームジー・アンベードカル(Bhimrao Ramji Ambedkar)の肖像を掲げながら、内陸部から列をなして行進した。
デモ参加者らの要求は、土地と水の権利。農村部を産業地区に変え、9%以上の経済成長を維持するため海外からの投資を促したい政府の狙いとは相反する。
インド独立の父、故マハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)の誕生日である10月2日、約2万5000人規模のデモ参加者らはグワリオル(Gwalior)の中心都市から600キロメートルにわたる大行進を開始し、奇跡的な経済成長の無意味さを訴えた。
デモの主催者は「インド国民の40%は土地を持たず、23%は極めて貧しい状態にある」と指摘する。「このような状況のせいでインド600地区のうち172地区で毛沢東主義派(Maoist)による暴動が発生し、100の地域で農民らが自殺する結果を招いた。このような地区における改革の成果はどこにあるのか?」と問いかけたいという。
今回のデモ行進は、政府に対し、富裕層や権力者にたやすく所有権を奪われてしまう現行法に変わり、借地、譲渡証書、借地使用権などに関する確固たる法律の導入を求めるのがねらい。
先祖代々守ってきた土地に証明書がないことや汚職が原因で、森林地帯の先住民などを含む多くの人々が土地を失っている。(c)AFP/Tripti Lahiri
ドーハラウンド妥結にインドの役割重要=米財務長官(ロイター、10月25日)
[ワシントン 24日 ロイター] ポールソン米財務長官は24日、世界貿易機関(WTO)ドーハラウンド農業交渉妥結に向け、インドが重要な役割を果たすことができるとの見解を示した。インド訪問を控え、ロイターテレビとのインタビューで「ドーハラウンドは合意間近だが、インドは合意に向け指導的役割を担うことができる」と述べた。
インドなど主要新興国でのサービスセクター開放がドーハラウンド妥結のカギを握ると指摘。「インドについては、規制されていないかあるいは自由化されたソフトウエア、航空のほか、一部製造業分野などでは非常に競争力がついてきており、よいことだ」と述べた。
米印核合意でインドが商業用核技術にアクセスできるようになることについては、両国にとって有益だがインド国内に反対意見もあることは認めた。
為替問題については、インドの柔軟な為替制度を称賛し、中国とインドは「まったく違った国である」と指摘した。
そのうえで「インドはバランスの取れた成長を遂げている。大きな不均衡はなく、インド経済は国内消費とサービスに依拠しているが、インフラ整備と資本市場の改革も必要だ」と述べた。
ポールソン米財務長官、インド金融改革支援を表明(日経新聞、10月25日)
【ワシントン=藤井一明】ポールソン米財務長官は24日、インドの経済について講演し「米国は経済の移行期にあるインドとパートナーであり続ける」と表明した。特に金融部門の改革を後押しし、ムンバイを「国際金融センター」に育てる構想に協力する考えを明らかにした。
インドの為替政策に関しては「ここ数カ月、為替の柔軟性を高めてきた。ルピーの切り上げはインフレ圧力を和らげるのに役立ってきた」と前向きに評価した。人民元改革の遅れを繰り返し批判してきた中国とは対照的な判断を示した。
インドが海外からの資本流入を抑える規制を加えると「意図しない結果を招く恐れがある」とけん制する一方で、為替の変動やインフレ圧力の点で「インドは正しい道を走っている」と語った。同時に米国とインドは「価値観と課題を共有している」と述べ、地球温暖化対策や世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の成功で連携を強める意向も強調した。(11:44)
GE、中国やインドの好調で米経済減速の影響は限定的=会長(朝日新聞、10月29日)
[シンガポール 29日 ロイター] 世界最大の複合企業、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のイメルト会長兼最高経営責任者(CEO)は、中国やインドなど新興国の経済が好調なため、米経済の減速は同社にとって打撃にはならないとの見通しを示した。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙とのインタビューで語った。
イメルト氏は、信用収縮を発端とする諸問題にもかかわらず、「中国やインドなど米国以外では経済は堅調なようだ」と指摘。「世界全体でみた場合、流動性は依然潤沢だ」とし、GEの米国以外での売上高は今後数年で年間10─15%のペースで伸びるとの見方を示した。また、中国やインドなど新興国市場では年間20%のペースで伸びており、これが衰える兆しはみえないとした。
同氏は、世界経済に巨額の資金を提供し、大型買収の資金調達源となっている政府系ファンド(ソブリン・ウエルス・ファンド=SWF)の影響を考慮することも重要だと指摘した。
同氏は「米国で経済がある程度減速した場合でも、医療用スキャナーや電力システムなどといった当社が扱うインフラ関連の商品に対する需要は高い水準にとどまる」とした。
また「クレジット市場の問題については、当社事業の大半に大きな影響は与えないだろう。GEへの全体的な影響は限定的だ」と述べた。
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